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親が学ぶほど苦しくなる家庭があります|子育ての正解を「わが家に合う形」に変えるために

  • 2026/08/14
  • 2026/08/12

夜、子どもが寝たあとにスマホを開く。今日も検索窓に、迷っていることを打ち込む。

「不登校 対応」「行き渋り 声かけ」「思春期 子ども 距離感」。

出てくる記事はどれも、読めば納得できる。「子どもの気持ちを受け止めましょう」「無理をさせないことが大切です」「先回りせず本人に任せましょう」「自己肯定感を下げないようにしましょう」。

そうだよな、と思いながら閉じる。

けれど翌朝、リビングでは同じことを言っている。

「早くしなさい」 「今日どうするの」 「昨日は行くって言ってたよね」

任せた方がいいと分かっているのに、子どもが動かないとつい手を出してしまう。学校を休ませるべきなのか、少し背中を押した方がいいのか、その場では判断がつかない。そして夜になると、またスマホで「正しい対応」を検索している。

こうした毎日を送っている親御さんは、決して少なくありません。そしてここで、はっきりさせておきたいことがあります。

こうした親御さんの多くは、知識がないから悩んでいるわけではないということです。

親は、知識がないから悩んでいるわけではない

みちびきに相談に来られる親御さんの多くは、驚くほどよく勉強されています。育児書を何冊も読み、SNSで発信している専門家のアカウントを保存し、学校のスクールカウンセラーにも相談し、時にはYouTubeで臨床心理士の解説動画まで見ている。不登校支援に関する情報も、ひと通り目を通していることが少なくありません。

情報が足りないのではありません。情報は、すでに十分すぎるほどあります。

問題は、その情報が「うちの場合、結局どうすればいいのか」という問いには、そのままでは答えてくれないという点にあります。

知識を得ることと、その知識を目の前の子どもと自分の家庭で実際に使うことは、似ているようでまったく別の作業です。この違いに気づかないまま情報だけを増やしていくと、「調べれば調べるほど、何が正しいのか分からなくなる」という状態に陥ることがあります。

「正しい関わり方」が、その家庭でも正しいとは限らない

本やSNS、インターネット上で得られる情報の多くは、基本的には一般論です。

ここで誤解しないでいただきたいのですが、一般論が役に立たないという話ではありません。多くの育児書や発信者の情報は、一定の理論や実践に基づいており、有益なものがほとんどです。

ただ、同じ対応であっても、

誰に ・いつ ・どの程度 ・どのくらいの期間 ・何を目的として

行うかによって、意味はまったく変わってきます。

たとえば、不登校になった直後で心身ともに疲弊している子どもに「まず休ませる」ことと、半年ほど家庭での生活が落ち着き、少しずつ外へ動く余力が出てきた子どもに、同じように「休ませ続ける」ことは、同じ言葉でも中身が違います。

母子登校を始めたばかりで、教室に入ること自体が精一杯だった子どもに親が付き添うことと、一人で準備も登校もできることが増えているのに、以前と同じように付き添いを続けることも、意味が違ってきます。

つまり、方法が間違っているのではなく、使うタイミングや量が、その子に合っていないことがあるということです。「正しい対応」を探すことに労力を注ぐより先に、「今、この子はどの状態にあるのか」を見る必要があります。

正しい関わり方を知っていても、家庭では使えなくなる

知識として理解していることと、それを実際の家庭で実行できることの間には、思っている以上に距離があります。

親自身が疲れている日もあります。子どもの反応が、想定していたものと違うこともあります。夫婦で対応への考え方が食い違っていることもあります。学校とのやり取り、家事、きょうだいの世話まで、すべてを一人で抱えている中で、「今日はこう対応しよう」と決めたことを、その通りに実行し続けるのは簡単ではありません。子どもに任せてみて、それで本当に失敗させてしまってよいのかという怖さもあります。

ここで「分かっているのに、できないのは意志が弱いから」と片づけてしまうと、話はそこで終わってしまいます。

しかし実際には、家庭という現実の中では、感情や状況が複雑に絡み合っています。知識通りに動けないのは、多くの場合、その人の意志の問題ではなく、置かれている状況そのものの問題です。

だからこそ、「なぜ、その対応が続けられなくなるのか」という背景そのものを見ていく必要があります。

学ぶほど「自分の正解」が強くなることもある

情報を集め続けるうえで、もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。

たとえば、「本人のペースを大切にした方がいい」と考え、学校のことにはあまり触れずに様子を見てきたとします。

ところが、数か月経っても状況はあまり変わらない。不安になってもう一度調べてみると、「焦らず待つことが大切」という情報が目に入る。それを読んで、「やっぱり今は待った方がいいんだ」と少し安心する。

もちろん、その子にとって「待つ」ことが必要な時期もあります。問題は、待つことそのものではありません。

「今も待つことが、この子にとって必要なのか」を見直すための情報よりも、自分がこれまで選んできた対応を支持してくれる情報ばかりが目に入るようになることがあります。

心理学には、これと関連する「確証バイアス」という考え方があります。心理学者のレイモンド・ニッカーソンが1998年に発表した論文では、確証バイアスとは、自分がすでに持っている考えや予測に沿う情報を探したり受け入れやすくなったりする一方で、それに反する情報は軽視されやすくなる傾向として整理されています。特別な人にだけ起こることではなく、人が情報と向き合うときに広く見られる傾向だとされています。

どちらの考え方が正しい、間違っているという話ではありません。

問題なのは、「今、この子には何が必要なのか」を考えるために始めたはずの情報収集が、いつのまにか「自分の判断は間違っていない」ことを確認するための情報収集に変わってしまうことがある、という点です。

だから必要なのは、「正解探し」より「見立て」

ここまでのことを踏まえると、必要なのは、もっと新しい正解を探すことではないと分かってきます。必要なのは、今、この家庭で何が起きているのかを見立てることです。

「何をすればいいですか」という問いに、すぐ方法だけをお答えすることは、みちびきではしていません。まず見ているのは、「なぜ今、それが起きているのか」という流れです。

たとえば、次のような流れが家庭の中でよく起こります。

子どもが「学校に行きたくない」と言う。親が「このまま不登校になるかもしれない」と受け取る。不安になる。理由を何度も聞く、あるいは説得する。子どもが黙る。親は「何を考えているのか分からない」とさらに不安になる。それでまた聞く。

この一連の流れを、「子どもが学校に行かない」という一つの事実や、「親が口を出しすぎる」という一つの行動だけで見てしまうと、どちらか一方に原因を求める話になりがちです。

しかし実際には、その前後で何が起き、あるやり取りが次にどんな反応を生み、それがまた次のやり取りにつながっていくのか、という循環として見る必要があります。家族療法の分野では、家族を一つのまとまったシステムとして捉え、誰か一人の性格や行動だけでなく、その中で繰り返されているやり取りのパターンに注目する考え方があります。

ここで誤解しないでいただきたいのは、これは「不登校の原因は家族にある」という意味ではないということです。家族というシステムの中でどんなやり取りが繰り返されているかを見ることは、誰が悪いかを決めることとは違います。今、変えられる可能性がどこにあるのかを探すための視点です。

親の感情を整えることは大切。でも、それだけでは足りない

親御さん自身の不安や焦りを整理することには、意味があります。ここは曖昧にしたくありません。

WHO(世界保健機関)が2022年にまとめたガイドラインでは、親や養育者へのペアレンティング支援について、親子関係や養育行動、親のメンタルヘルス、子どもの情緒・行動面などへの影響が検討されています。

2〜10歳の子どもの親を対象とした、社会的学習理論に基づく介入では、肯定的な養育行動や親のメンタルヘルス、子どもの外在化行動などについて、中程度の確実性のエビデンスが示されています。一方、子どもの内在化問題や養育ストレスなどについては、エビデンスの確実性は低いと評価されています。

また、10〜17歳の思春期の子どもを持つ親への介入については、肯定的な養育行動を除き、多くの項目でエビデンスの確実性は非常に低いとされています。これは「親への働きかけに意味がない」ということではなく、特に思春期については、まだ十分な研究が蓄積されていないということです。

ここから言えるのは、親への働きかけには一定の意義があるということです。ただし、「親が正しい関わり方を身につければ家庭の問題が解決する」とまで言えるものではありません。親自身の感情や関わり方だけでなく、その家庭で何が起きているのかを見ていく必要があります。

大切なのは、「感情そのもの」だけを扱うのではなく、

出来事が起きる。親がそれをどう受け取るか。そこにどんな感情が生まれるか。その感情からどんな対応をとるか。子どもがどう反応するか。その反応を親が次にどう判断するか。

という一連の流れとして見ていくことです。

なぜその場面で不安になるのか。なぜ子どものその反応を見ると、つい手を出してしまうのか。なぜ夫婦で同じ場面になると、決まって衝突するのか。感情の奥にあるこうした流れを見ていくことが、支援では欠かせません。

「支えること」と「本人に返すこと」を分ける

これは、みちびきが支援の中で大切にしている実践上の原則のひとつです。

不登校や行き渋りの状態では、親が支える必要がある時期が確かにあります。心身ともに疲れ切っているときに、無理に本人に任せることは、単なる突き放しになってしまいます。

一方で、すべてを親が抱え続けてしまうと、子どもが本来、自分自身で経験するはずだったことを経験できなくなることがあります。困る。考える。選ぶ。時には失敗する。そこから立て直す。自分から助けを求める。こうした経験の機会が、知らないうちに減ってしまうことがあるのです。

だからこそ、「これは今、親が支えることなのか」「これはそろそろ本人に返していけることなのか」を、一つずつ分けて考える必要があります。

朝の準備、忘れ物、宿題、学校への相談、友人関係、登校の方法、一日の予定管理。こうした一つひとつについて、今はまだ支える段階なのか、少しずつ返していく段階なのかは、子どもの状態や時期によって変わっていきます。

もちろん、「全部を本人に任せれば自立する」という単純な話でもありません。まだ一人では難しいことを性急に返してしまえば、それは突き放しでしかありません。逆に、すでにできるようになっていることまで、親がいつまでも持ち続けていれば、本人が経験を積む機会を減らすことになります。

支援というと、量を増やすことばかりが意識されがちですが、いつ、どの支援を減らしていくかを考えることも、家庭教育の重要な一部です。

家庭教育とは、親が完璧になることではない

ここまでの内容を踏まえて、みちびきが考える「家庭教育」について、あらためてお伝えします。

家庭教育とは、親が正しい親になることでも、子どもを管理することでもありません。

子どもが少しずつ自分で考え、選び、行動し、うまくいかなかったときには自分で立て直し、必要なときには他者を頼りながら、自分の人生を扱っていけるようになるために、家庭の中の環境、会話、役割、距離感を整えていくこと。みちびきでは、家庭教育をそのように捉えています。

この土台となるのが、子どもが育んでいく非認知能力です。みちびきでは、支援の現場での実践をもとに、非認知能力を次の3つの力として整理しています。

自分を高める力: 努力する、挑戦する、続けるなど、自分自身をよりよい方向へ伸ばしていく力です。

自分と向き合う力: 自分の感情や状態に気づく、整理する、振り返る、休む、立て直すなど、自分自身を理解し調整していく力です。

他者とつながる力: 人に相談する、助けを求める、自分の気持ちや困りごとを言葉にして伝える、他者と関係を築いていく力です。

親がすべてを先回りしてしまうと、子どもが挑戦する機会だけでなく、自分の困りごとに気づく機会や、「助けて」と自分から伝える機会まで、あわせて減ってしまうことがあります。

ですから、「何でも一人でできる子にすること」を、みちびきでは自立とは考えていません。自分の状態を理解し、必要なときには他者を頼れることまで含めて、その子が自分の力で歩んでいく状態を「自走」と捉えています。

「何をするか」より、「なぜ今それをするのか」

一般論を、その家庭に合う形に変えるとは、具体的にはどういうことなのでしょうか。

たとえば、「朝は声をかけない」という、同じひとつの対応があるとします。

これは、親の過干渉を減らすためかもしれません。朝の準備を本人に返していくためかもしれません。親子げんかをいったん減らすためかもしれません。心身が疲れ切っている時期に、刺激を減らすためかもしれません。

方法の表面だけを見ると、どれも「朝は声をかけない」という同じ行動です。しかし、その家庭で今、なぜその対応をとるのかという理由が説明できるかどうかで、意味はまったく変わってきます。

そして対応は、一度決めたら終わりではありません。対応してみる。子どもの反応を見る。家庭全体の変化を見る。それをもとに、あらためて見立て直す。必要であれば、方法を調整する。

この循環を止めずに続けていくことが、家庭教育の実践そのものです。一度決めた「正しい方法」を、そのまま守り続けることが支援ではありません。

みちびきでは「その家庭で何が起きているのか」から考えます

みちびきでは、初回のご相談などを通して、次のようなことを一つずつ整理していきます。

子どもが何に負荷を感じている可能性があるか。家庭の中でどんなやり取りが繰り返されているか。親御さんがどんな場面で不安になりやすいか。親御さんが一人で抱えすぎているものはないか。少しずつ本人に返していけることはあるか。学校の環境と本人の特性の間にミスマッチはないか。発達特性や本人の性格を踏まえて考える必要はないか。ご夫婦の間で対応にどんな差があるか。そして、今は休むべき時期なのか、それとも小さく動き始める時期なのか。

家庭教育だけで、すべてを説明できるとは考えていません。必要に応じて、医療、発達、心理、学校環境、いじめ、本人の特性など、さまざまな可能性を含めて考えます。

「すべては親子関係の問題だ」「家庭を変えれば不登校は解決する」というような単純化も、みちびきでは行いません。

みちびきが提供できる価値は、正解を教えることではありません。一般論を、その家庭に合う形へ翻訳し、そこから現実的な一歩まで一緒に整理していくことだと考えています。

まとめ

子どものために、たくさん調べてきた。本も読んだ。SNSも見た。できることは、ひと通り試してきた。

それでもうまくいかないと、「自分のやり方が悪いのではないか」と思ってしまうことがあります。

けれど、必要なのは、さらに新しい正解を増やすことではないかもしれません。

一般論として正しいことと、今、目の前にいる子どもに必要なことは、必ずしも同じではありません。

今、この家庭では何が起きているのか。何を支え、何を本人に返していくのか。今までの関わりを、どこから少し変えてみるのか。

正解を増やすのではなく、今すでに持っている知識を「わが家に合う形」に変えていくこと。みちびきが大切にしているのは、その一点に尽きます。

一度、ご家庭の状態を整理してみませんか

いろいろ調べてきたけれど、結局うちの場合はどうすればいいのか分からない。

そう感じている方にお伝えしたいのは、それは調べ方が足りなかったからではないということです。一般論を、そのままご家庭に当てはめようとしてきた結果、そう感じているだけかもしれません。

みちびきでは、一般的な方法をそのまま当てはめるのではなく、お子さんの状態や、ご家庭の中で繰り返されているやり取りをうかがいながら、今のご家庭に合った現実的な一歩を一緒に整理していきます。

一度、ご家庭の状態を整理してみてもよいタイミングかもしれません。ご相談は、お問い合わせフォームから承っております。

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Profile

佐藤 博

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)

15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)

家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。

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