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同じ親子げんかを何度も繰り返す家庭で起きていること|「怒らない」より大切な家庭の流れの見方

  • 2026/08/17
  • 2026/08/14

「宿題やったの?」 「あとでやる」 「さっきもそう言ってたよね」 「分かってる!」 「分かってるならやりなさい」 「うるさい!」

最初は、宿題の話だったはずです。

それなのに気づけば、

「その言い方は何?」 「お母さんだって○○やん」 「今はあなたの話でしょ」

と、まったく別の言い争いになっている。

そして夜になり、「また今日も怒ってしまった」と、布団の中で後悔する。

翌日になると、また同じことが起きる。

こうした親子げんかに、心当たりのある方は少なくないと思います。

同じ親子げんかを繰り返しているとき、「怒らない方法」を探すだけでは足りないことがあります。見る必要があるのは、その喧嘩がどう始まり、どう大きくなっていくのかという、家庭の中の流れです。

親子げんかは、すべて悪いわけではありません

「親子げんか」と聞くと、なくすべきもの、避けるべきものというイメージを持たれるかもしれません。ですが、家庭は、人との関係を経験する場でもあります。

意見が食い違う。腹が立つ。つい言いすぎる。相手の気持ちに気づく。自分の言い方を振り返る。謝る。仲直りする。こうした一連の経験は、人との関係を学んでいくうえで、意味のある機会にもなり得ます。

きょうだいがいる家庭では、日常の中で意見がぶつかったり、その後に関係を戻したりする経験が生まれることがあります。一人っ子の場合、そうした経験をきょうだい関係の中で積むことはありませんが、だからといって親との衝突を意図的につくる必要があるわけではありません。

ここでお伝えしたいのは、親子の意見がぶつかること自体を、すべて「悪いこと」として排除する必要はないということです。

ただし、「意見がぶつかること」と、「親子としての境界や役割まで崩れてしまうこと」は、別の問題です。

問題なのは「喧嘩したこと」ではなく、親が同じ土俵に入ってしまうこと

みちびきの支援の中でも、親御さんへよくお伝えしていることがあります。それは、「子どもと同じ土俵に入って言い合わない」ということです。

たとえば、こんなやり取りです。

子「お母さんだってできてないやん」 親「私はちゃんとやってるわ」 子「やってないやん」 親「やってる!」 子「嘘つけ」 親「誰に向かってそんな言い方してるの!」

本来は「宿題をどうするか」という話だったはずなのに、いつの間にか、「どちらが正しいか」「どちらが折れるか」という争いに変わっていく。

こうしたやり取りは、支援の中でも決して珍しいものではありません。「子ども相手に、つい本気になってしまった」「売り言葉に買い言葉になってしまった」「後から考えれば、言わなくてよかったことまで言ってしまった」というお話は、よく伺います。

ですから、「自分だけが未熟な親なのではないか」と自分を責める必要はありません。

一方で、「よくあることだから、そのままでいい」ということでもありません。よく起こることだからこそ、なぜその流れになるのかを知り、変えられる場所を探していく価値があります。

親も感情を持つ人間ですから、怒ってはいけないという話ではありません。ただ、子どもの感情に引っ張られて親まで同じ土俵に入ってしまうと、親が本来担える「一歩引いて状況を見る」「関係を整える」「必要な境界を示す」という役割を、果たしにくくなります。これは、「親は偉く、子どもは従うべきだ」という話ではなく、大人の側が、関係を調整する責任をより多く持っている、という意味です。

なぜ、わが子相手だと配慮がなくなりやすいのか

職場で「何回言ったら分かるの」「だから前も言ったよね」と、同僚に毎日言う人は多くありません。けれど、わが子には、同じ言葉をぶつけてしまうことがあります。

家族は、他人よりも心理的な距離が近い関係です。その分、外では一度飲み込むような言葉でも、家庭ではそのまま出てしまうことがあります。

さらに親子では、「この子のことは自分がよく分かっている」「このくらい言っても大丈夫」「親なんだから言わなければ」という感覚も重なりやすくなります。

子どもの側も同じです。安心できる親だからこそ、外では抑えている感情を、家の中では強く出すことがあります。

家族だから本音を言えることと、家族だから配慮しなくていいことは、別のことです。とはいえ、家庭の中で感情を出すこと自体を、問題視する必要はありません。

同じ親子げんかが繰り返される家庭には「流れ」がある

ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。

宿題を例に、よくある流れを追ってみます。

子どもが宿題をしていない。親が「宿題は?」と聞く。子どもは「あとで」と答える。時間が経っても動かない。親が不安になる。もう一度確認する。子どもは「分かってる」と反発する。親は「言わなければやらない」と感じる。関わりがさらに強くなる。子どもの反発も強くなる。喧嘩になる。

ここで大切なのは、「子どもが宿題をしないから喧嘩になった」で終わらせないことです。

親の不安が声かけを増やし、増えた声かけが子どもの反発を強め、その反発が親の不安をさらに強めていく。どちらか一方だけが原因なのではなく、双方の反応が、お互いの次の反応を生んでいるのです。

家族療法の分野では、こうしたやり取りの繰り返しを「相互作用」や「循環」として見る考え方があります。難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、要するに、誰か一人の性格や言動だけを見るのではなく、家庭の中でどんなキャッチボールが繰り返されているかを見ていく、ということです。

「原因を探すこと」より、「循環を見ること」。みちびきが支援の中で大切にしている視点のひとつです。

「この子は言わないと動かない」は、本当に子どもの特性なのか

親子げんかを繰り返していると、「この子は言わないとやらない」「何回言っても分からない」「放っておいたら何もしない」という子ども像が、家庭の中でできあがっていくことがあります。

ここで考えていただきたいのは、それが最初からそういう子だったのか、それとも、「親が言う、子どもが動く」という関係を長く繰り返す中で、その関係性自体が強まってきた部分もあるのか、という点です。

同時に、ADHDなどの発達特性、実行機能の弱さ、学習面の困難、強い不安、疲労の蓄積、学校環境の負荷など、実際に外部からの支援を必要としている子どもがいることも事実です。すべてを「親の関わり方」だけで説明することはできません。子ども自身の特性と、家庭や学校という環境との相互作用として見ていく必要があります。

親子げんかの「あと」にこそ、育てられる力がある

大切なのは、一度も喧嘩をしない家庭を作ることではなく、衝突しても関係を修復できる家庭を作ることです。

みちびきでは、非認知能力を、自分を高める力、自分と向き合う力、他者とつながる力の3つで捉えています。

親子げんかのあとの振り返りは、この3つと深く関わっています。

「自分と向き合う力」は、何に腹が立ったのか、本当は何を伝えたかったのか、自分の言い方はどうだったのかを、自分自身で振り返る力です。

「他者とつながる力」は、相手の気持ちを聞く、言いすぎたことを謝る、嫌だったことを言葉で伝える、関係を修復していく力です。

「自分を高める力」は、次に同じことが起きたら、今度はどうするか考え、違う方法を試してみる力です。

喧嘩をする。振り返る。修復する。次の行動を考える。この一連のプロセスそのものが、子どもの成長につながっていく可能性があります。

親が謝ることと、親の立場が下がることは違います

「さっきはお母さんも言いすぎた。ごめんね」

こう伝えることは、親の立場を下げることではありません。間違ったときに認め、謝り、関係を修復するという、大人としてのモデルを示していることになります。

一方で、これとは別の流れもあります。子どもが怒る。親が要求を撤回する。暴言を吐かれても、それについては何も伝えない。機嫌を取る。そうしているうちに、親が本来示すべき境界まで、少しずつ曖昧になっていく。

「謝ること」と「迎合すること」は、混同しないほうがよい別のものです。子どもの感情を尊重することと、子どものすべての要求を受け入れることも、同じではありません。

「誰が悪いか」ではなく、「どこで流れを変えるか」

親子げんかが起きたとき、ご家庭で振り返ってみていただきたい視点があります。

何がきっかけだったか。最初に誰が何を言ったか。その直前、親は何を心配していたか。子どもは何に反応したか。どこから、本来の話ではなくなっていったか。いつも同じ展開になっていないか。どこであれば、一つ違う対応ができそうか。

「誰が悪かったか」を決めるのではなく、「この家庭では、どこで流れが固定されているのか」を見る。これが、家庭の流れを見立てるということです。

家庭教育で大切なのは「正しい親」になることではない

親は、いつも冷静でいる必要はありません。怒ることもあります。間違えることもあります。言いすぎてしまうこともあります。

大切なのは、「今、自分は子どもの感情に巻き込まれているのか」「本来の問題から話がずれていないか」「今、何を伝える必要があるのか」に気づき、必要であれば、その場で流れを修正できることです。

家庭教育とは、親が完璧になるためのものではありません。子どもが自分で考え、自分の感情を扱い、他者と関係を作り、少しずつ自分で動けるようになっていくために、家庭の環境や会話、役割、距離感を整えていくことです。

みちびきでは「喧嘩の内容」だけでなく、その前後を見ます

「昨日、宿題のことで大げんかしました」

そうした相談をいただいたとき、「もっと優しく言いましょう」「怒らないようにしましょう」だけでお答えすることはありません。

その前に何があったのか。親は何を心配していたのか。最初にどんな声をかけたのか。子どもはどう反応したのか。親はその反応をどう受け取ったのか。普段から同じようなやり取りが起きていないか。学校や学習面に、別の困難が重なっていないか。こうしたことを、一つずつ一緒に整理していきます。

そのうえで、この家庭の場合、どこを一つ変えれば流れが変わる可能性があるのかを、一緒に考えていきます。一般的な「正しい声かけ」をそのまま当てはめるのではなく、その家庭で実際に起きていることを見ながら、現実的な一歩へ落とし込んでいくことを、みちびきでは大切にしています。

同じようなことは、宿題だけでなく、朝の支度、ゲームやスマホ、登校、生活習慣、片付け、親子の約束など、さまざまな場面で起こります。

親御さんは、「正しい関わり方」をすでに知っていることも少なくありません。それでも、実際の家庭では、同じやり取りに戻ってしまう。それは、知識が足りないからとは限りません。

家庭には、親自身の感情、子どもの特性、これまで積み重なってきた親子関係、夫婦それぞれの考え方、学校との関係、日々の生活状況があり、一般論だけでは、なかなか整理しきれないからです。

「怒らないようにしよう」「もっと話を聞こう」と分かっているのに、実際の家庭ではうまくいかない。そんなとき、必要なのは、新しい子育てテクニックをもう一つ増やすことではないかもしれません。

なぜ、分かっているのに同じ関わりに戻ってしまうのか。そして、一般的な子育ての知識を、どうすれば「わが家に合う形」に変えていけるのか。こちらの記事では、親の感情だけでなく、家庭の中で繰り返される流れという視点から、詳しく整理しています。

→関連記事:[親が学ぶほど苦しくなる家庭があります|子育ての正解を「わが家に合う形」に変えるために]

まとめ

親子げんかをゼロにすることを、ゴールにする必要はありません。

意見がぶつかることはあります。親も感情的になることがあります。子どもも、強い言葉を使ってしまうことがあります。

大切なのは、そこで「誰が悪かったか」だけで終わらせず、「なぜ、いつもこの流れになるのだろう」と、一段引いて見られることです。

家庭の流れが見えてくると、変えられる場所も見えてきます。

いつもと違う関わりを一つ試してみることで、それに対する子どもの反応が変わることがあります。子どもの反応が変われば、親の受け取り方や次の関わりも変わっていく。そうして、これまで繰り返されていた家庭の流れそのものが、少しずつ動き始めることがあります。

もし、ご自分たちだけではその流れが見えにくいと感じるときは、一度、第三者と一緒に整理してみることも、ひとつの選択肢です。

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Profile

佐藤 博

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)

15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)

家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。

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