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『頑張る力』があるのに不登校になるのはなぜか~見落とされやすい3つの力~

  • 2026/06/16
  • 2026/06/09

宿題もやる。

遅刻もしない。

先生からの評価も悪くない。

むしろ「しっかりした子ですね」と言われることが多い。

でも、その頑張りが限界を超えたとき、子どもは突然動けなくなることがある。

「なぜ、あの子が」

その驚きは本物です。サインを見落としていたことへの後悔と、理解できない混乱が混ざっています。ただ、支援の現場で見ていると、これは決して珍しいことではありません。頑張れる子ほど、ある日突然崩れるケースがあります。
そして、「真面目で責任感が強くて優しい子ほど」という枕詞がつくことも、少なくありません。

不登校は、「頑張る力が足りないから起きる問題」ではありません。

だからこそ私たちは、「もっと頑張れるようにすること」ではなく、「自分の状態に気づく力」「回復する力」「困ったときに助けを求める力」を育てることを大切にしています。

不登校は「頑張る力が弱い」から起きるのか

不登校と聞くと、多くの人は「頑張れない子」「逃げている子」というイメージを持つことが多いでしょう。社会全体にそういう誤解が根強くあります。

でも支援の現場で実際に子どもたちと関わってみると、まったく逆のことが多いです。不登校になる子の中には、限界まで頑張り続けた子どもがたくさんいます。誰にも言わずに、しんどさを抱えたまま、それでも毎日学校に行き続け、そして、もう持てなくなったとき、体が動かなくなった・・・。

「頑張る力が弱い」どころか、頑張る力が強すぎたとさえ言えるケースがあります。

では、何が足りなかったのでしょうか。

学校生活に必要な、3つの力

みちびきでは、学校で毎日を過ごすために、子どもには3つの力が必要だと考えています。

頑張る力

努力する、継続する、挑戦する、責任を果たす——いわゆる「頑張る力」です。この力は目に見えやすいでしょう。テストで点を取る、部活で練習を続ける、係の仕事を最後までやる。結果として現れやすいから、周囲からも評価されやすいです。

「うちの子は頑張り屋で」と思う親御さんの子どもは、たいていこの力が強いと言えるでしょう。

回復する力

疲れに気づく、不安を感じ取る、適切に休む、調整する、立て直す——これが「回復する力」です。

学校生活は、消耗の連続です。授業、人間関係、行事、部活、テスト。毎日何らかの負荷がかかっています。その消耗を回復できるかどうかが、長く続けられるかどうかに直結します。

ここで大事なのは、「疲れに気づく」という部分でしょう。疲れていることに気づかなければ、休もうという判断も生まれません。頑張る力が強い子どもは、疲れを感じながらもそれを無視して動き続けることができます。それが、後になって大きな問題につながることがあるのです。

支援の中でよく見るのは、「疲れていない」と言う子どもです。

ただ実際には、

・帰宅するとすぐ横になる
・休日は昼まで寝ている
・好きだったことをしなくなる
・イライラしやすくなる

といった変化が出ています。

本人は頑張ることに慣れすぎていて、疲れていること自体に気づいていないことがあります。回復する力とは、休む力でもあります。

助けを求める力

先生に相談する、親に話す、友達に頼る、「困った」を伝える——これが「助けを求める力」です。

一人で抱えず、誰かに頼ることができるかどうか。この力が弱いと、しんどさが外に出ないまま積み重なっていきます。「困っているように見えない」「いつも通りに見える」というのは、実は危険なサインであることがあります。

なぜ、頑張れる子ほど崩れるのか

ここが、この記事で最も伝えたいことです。

頑張る力だけが強い状態というのは、アクセルだけがあってブレーキがない車のようなものです。走り続けることはできる。でも、止まり方を知らない。そんな状態です。

真面目で責任感が強い子どもは、「しんどい」と感じても、「でもやらなければ」という気持ちがそれを上回ります。「先生に迷惑をかけてはいけない」「親を心配させたくない」という思いが、助けを求めることを遠ざけてしまいます。疲れていても「これくらいで音を上げてはいけない」と、感覚を鈍らせながら動き続けることもあるようです。

その状態が何週間、何ヶ月と続いた後、ある日突然「もう動けない」という形で限界が来ます。

本人も驚くことがあります。昨日まで普通に学校に行けていたのに、今朝は体が動かない。理由が分からない。説明できない。親も驚く。周囲も驚く。でも実際には、「突然」ではなく、ただ、見えていなかっただけなのです。

家庭で見落とされやすいサイン

親御さんが安心しやすい状態があります。

学校に行けている。宿題をこなしている。文句を言わない。先生からも「頑張っていますよ」と言われる。——これが揃っていると、「大丈夫」と判断したくなるのです。

でもこの状態は、必ずしも「余裕がある」を意味しないということは理解しておきたいです。「行かなければならない」という義務感で動いている子どもも、外から見れば同じに見えるからです。疲れていても「大丈夫」と言う子どもも、問題のない子どもと区別がつきません。

こういうケースで、崩れる直前によく聞くのは次のような言葉です。

「最近、帰宅後すぐ横になっている」「夜、なかなか眠れていないみたい」「食欲が落ちている気がする」「何か聞いても、最近返事が短い」——これらは、一つひとつは「そんなもんかな」で流せる変化です。でも、複数が重なっていて、それが数週間続いているなら、消耗のサインとして見た方がいいかもしれません。

外側が「普通」でも、内側では限界に近いことがあるからです。

非認知能力の視点で整理すると

みちびきでは、子どもに育ってほしい力を3つに分けて考えています。

自分を高める力——努力する、挑戦する、続ける。いわゆる「頑張る力」に対応します。

自分と向き合う力——自分の状態に気づく、感情を整理する、適切に休む。「回復する力」に対応します。

他者とつながる力——人に頼る、助けを求める、困りごとを伝える。「助けを求める力」に対応します。

支援の現場で出会う子どもたちは、「自分を高める力」が弱いわけではありません。

むしろ、

・真面目
・完璧にこなそうとする
・「こうしなければ」という気持ちが強い

という特徴を持つ子どもが少なくありません。
だからこそ、「もっと頑張れるようになること」が必要なのではなく、「自分の状態に気づくこと」「助けを求めること」が課題になっていることがあります。でも「自分と向き合う力」と「他者とつながる力」が育ちにくい環境にいたことが多いと言えます。

この3つがバランスよく育っていることが、学校生活を長く続けるための土台になります。一つだけが突出していても、長続きしません。特に「自分を高める力」だけが強い場合、それは頑張れるように見えて、実は消耗に向かいやすい状態なのです。

家庭でできること

「頑張れ」という声かけが、決して悪いわけではありません。ただ、今の子どもに本当に必要なのが「頑張れ」なのかどうかを、少し立ち止まって考えてみることがあります。

消耗しているときに「頑張れ」は届きません。それどころか、「まだ足りない」「自分はダメだ」という感覚を強めることがあります。代わりに、こういう言葉を使ってみましょう。

「今日はどうだった?」と、結果ではなく状態を聞く。「疲れてない?」と、消耗に気づく会話を作る。「困ったときは誰かに相談できそう?」と、助けを求める経験を言葉にしておく。

「困ったときに助けを求めていい」という感覚は、一度の声かけで育つものではありません。日常の小さなやり取りの積み重ねの中で、少しずつ形成されていくものです。だからこそ、まだ崩れていない今の時期に、この種の会話を意識的に増やすことが意味を持つでしょう。

もう一つ、大切なことがあります。

親が「頑張れ」という言葉を使いやすい状況には、親自身も「頑張らなければ」という感覚を持っているケースが多いです。子どもの「しんどい」を受け止めるためには、親自身も少し余裕がある状態である必要があるでしょう。子どもの回復力と助けを求める力を育てようとするなら、家庭全体の空気から見直すことが近道になることがあります。

みちびきの支援について

みちびきでは、不登校や行き渋りの相談を受けるとき、「頑張る力が足りないから」という見方をしません。

その代わりに見るのは、3つの力のバランスです。今どの力が過剰になっていて、どの力が育ちにくい状態になっているのか。家庭の関わり方の中に、それを強めている何かがないか。学校環境との相性はどうか。そして親御さん自身が、今どういう状態にいるかも見ます。子どもの支援は、親御さんへの支援なしには成り立たないことが多いからです。

不登校は、「頑張る力が足りない子ども」がなるものではありません。支援の現場では、「頑張る力だけで走り続けてしまった子ども」に出会うことが少なくありません。
だから私たちは、頑張らせることよりも、回復する力と助けを求める力を育てることを大切にしています。

まとめ

頑張る力は、大切な力です。でも頑張る力だけでは、学校生活を支えることはできません。

疲れたら回復できること。しんどいとき、誰かに頼れること。この2つが揃ってはじめて、頑張る力が本当の意味で活きてきます。真面目で、責任感が強くて、優しい子どもほど、しんどさを一人で抱えやすいです。「大丈夫」と言いながら、内側では限界に近づいていることがあるのです。

「なんで急に」と感じたとき、それは突然ではなかったのかもしれません。ただ、見えていなかっただけかもしれません。

「うちの子のことかもしれない」と感じた方は、今の状態を一度整理してみることをお勧めします。まだ学校に行けている段階でも、相談できます。気になることがあれば、お問い合わせフォームからご連絡ください。

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Profile

佐藤 博

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)

15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)

家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。

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