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母子登校はなぜ解消しないのか|非認知能力から見る「自分で動けない状態」

  • 2026/05/12
  • 2026/04/28

母子登校が長引く背景には、親が子どもに付き添うことで一時的に安心できる一方で、結果として「付き添いがなければ動きにくい」というループが固まっていくことがあります。そしてそのループを変えるためには、場面ごとの対応ではなく、家庭全体の関わり方を構造として見直す必要がある——前回の記事でそのことをお伝えしました。

ただ、こういったことを書くたびに感じることがあります。「構造は分かった。でも、変わらない」という現実です。

理解することと、変えられることは別の話です。母子登校が長期化しているご家庭では、原因が分かっても、正しい方向性が分かっても、なかなか動けない状態が続くことがあります。この記事では、その「分かっているのに変わらない」という状態の正体に踏み込みます。

なぜ理解しても変わらないのか

「構造が分かった、関わり方を変えなければいけない」と理解した親御さんが、翌朝どうなるかを想像してみてください。

子どもが「行きたくない」と言う。昨日まで付き添っていた。今日は変えようと思っている。でも子どもは泣き始める。時間は迫っている。仕事がある。ここで「今日は一人で行ける?」と言い切れるかどうか。

多くの場合、言えません。または言っても、子どもが崩れ始めた瞬間に「やっぱり今日は一緒に行く」となります。

これは意志が弱いからでも、知識が足りないからでもありません。「理解」は頭の中の話ですが、「変える」は感情が動く現実の場面で起きる話だからです。知識は行動を保証しません。特に、目の前で子どもが泣いているときは。

では、何が「変える」ことを難しくしているのか。そこに、非認知能力という視点が関わってきます。

非認知能力の視点から見る「動けない状態」

非認知能力とは、学力のように点数で測る力ではなく、感情を調整する力、自分で行動する力、人との関係を築く力など、日常生活の中で育っていく力です。
母子登校を考えるときも、この非認知能力の視点から見ることで、「なぜ分かっているのに動けないのか」が見えやすくなります。

自己調整力——感情と不安を自分で扱う力

学校に行く朝、子どもの中では何が起きているでしょうか。不安が上がる、恐怖に近い感覚がある、体が動かなくなる。こうした感情の波が来たとき、「不安はあるけれど、とりあえず動いてみる」という調整ができるかどうか、それが自己調整力です。

母子登校が長引いている子どもの多くは、この自己調整力がうまく働きにくい状態にあります。不安が来たとき、それを抱えながら前に進む経験が積まれていないため、「不安=動けない」という回路が出来上がっています。

親が付き添うことで毎回不安を外から解消してきた場合、子どもは自分で不安を扱う練習をしてきていません。外から解消してもらうことで安心することには慣れているが、自分の内側から安心を作ることには慣れていない——この状態が、長期化の核心にあります。

行動の起点——自分で「動き始める」力

「行動の起点」とは、自分で「やってみよう」と動き始める力のことです。

母子登校の子どもは、多くの場合「誰かがいれば動ける」という状態にあります。親が横にいれば学校に行ける、先生が声をかければ教室に入れる。これは悪いことではありません。ただ、「誰かがいなければ動けない」がセットになっているとき、問題が起きます。

学校生活の中で、あるいは人生のあらゆる場面で、「自分で動き始める力」は必要になります。それが育っていない状態で「一人で行って」と言われても、子どもにとっては、「まだ準備が整っていないのに、一気に進むことを求められている」ような感覚になりかねません。

不安耐性——不安があっても動ける力

不安耐性とは、不安をゼロにすることではありません。不安を感じながらも、それを抱えて行動できるかどうかです。

大人でも、緊張しながら会議に臨む、怖いけれど電話する、不安だけど決断する、ということがあります。これができるのは、「不安があっても大丈夫だった」という経験を積んできたからです。

母子登校が長引く子どもは、「不安があると付き添ってもらえる」という経験を重ねているため、不安そのものを避けることに慣れていきます。不安と共に動く練習が積まれないまま時間が過ぎるほど、不安耐性は育ちにくくなります。

母子登校の本質——「登校の問題」ではない

ここで、一度立ち止まって考えてほしいことがあります。

母子登校は、「学校に行けるか行けないか」の問題ではありません。「自分で動けるかどうか」の問題です。

付き添いがあれば学校には行けている。これは事実です。ただ、付き添いがあって行けている状態と、自分の力で動けている状態は、まったく別の状態です。

前者が続く限り、「付き添いがなければ行けない」は変わりません。そして、付き添いがあっても行けない状態に移行した場合、それが「不登校」と呼ばれる状態になります。

母子登校の長期化は、「登校できている状態」ではなく、「自分で動けない状態が固定されていく過程」として見る必要があります。この理解があるかどうかで、関わり方の方向が根本から変わります。

「母子登校のやめ方」や「付き添い登校をいつまで続けるのか」と悩むときも、単に距離を短くする方法だけでなく、子どもが自分で動ける状態をどう育てるかを見る必要があります。

親の関わりの本質——「安心の与え方」ではなく「安心の作り方」

よく「子どもに安心を与えてあげてください」という表現があります。間違っていません。ただ、この言葉には落とし穴があります。

「安心を与える」というのは、外から安心を届けることです。親が付き添う、先生が声をかける、環境を整える。これらはすべて「外から与える安心」です。

これが必要な段階は確かにあります。しかしこれだけでは、子どもが「自分の内側から安心を作る力」は育ちません。

本当に必要なのは、「安心の与え方」から「安心の作り方を一緒に育てること」への移行です。不安を外から取り除くことより、不安があっても自分で一歩踏み出せた経験を子どもの中に積み重ねること——この方向への転換が、長期的な解消につながります。

ただし、この転換は簡単ではありません。タイミングが早すぎれば子どもが崩れます。遅すぎれば固定が進みます。段階の設計と、子どもの状態の見極めが同時に必要です。

関わりのズレが起きやすい場面

親の関わりがずれやすいのは、子どもが「しんどい」を示したときです。泣く、体調不良を訴える、激しく拒否する——こういったサインが出たとき、多くの親御さんはまず「安心させよう」と動きます。それ自体は自然な反応です。

ただ、毎回そのパターンで動くことで、子どもの中に「しんどいを示せば安心が来る」という回路ができていきます。これは子どもが意図的に使っているのではなく、そういう学習が積み重なっているということです。

「しんどいを受け止める」ことと、「しんどいが出るたびに外から解消する」ことは別の関わりです。この区別が、関わりの質を変えます。

重要な注意点——やり方次第で逆効果になる

ここは特に慎重に読んでいただきたい部分です。

「付き添いを段階的に減らす」という方向性は正しいです。ただし、方法を間違えると逆効果になります。

子どもの状態を見極めずに距離を縮めようとすると、強い拒絶反応が出たり、状態が急激に悪化したりすることがあります。「段階的に」という言葉は簡単ですが、「どのタイミングで」「どの程度の変化を」「どう見届けるか」が設計されていないと、関係性が壊れるリスクがあります。

また、子どもが発達特性を持っている場合、感覚過敏や見通しの弱さなど、別の要因が絡んでいることがあります。その場合、一般的な「段階を踏む」アプローチだけでは不十分なことがあります。

もう一つ、親御さん自身の状態も関わります。毎朝の判断を一人で続けることで、親が消耗している状態が続くと、子どもへの関わりが不安定になりやすくなります。親の安定が子どもの安定に直結している以上、親自身の状態を整えることも、解消への道として外せません。

「正しい方向性を知っている」だけでは、これらの複合的な要素に対応することは難しいです。

今の関わりで、この状態は変わるのか?

一度、立ち止まって自分に問いかけてみてください。

今の関わり方を続けたとして、半年後、子どもの状態はどうなっているでしょうか。「付き添いが続いている」「少し改善した」「悪化した」——どのイメージが浮かびますか。

「このままではいけない」と感じているのに動けていない場合、それ自体がすでに一つのサインです。理解しているのに変えられない状態は、関わり方の問題ではなく、構造の問題であることが多いです。自分の力だけで構造を変えようとすることには、限界があります。

また、「やってみたけれど悪化した」「どうすればいいか分からなくなった」という状態にある場合は、一人で続けることでさらに状態が固定されるリスクがあります。

ここまで読んで、難しいと感じた方へ

この記事を最後まで読んでいただいた方の中には、「理解はできた、でも自分でやるのは難しいかもしれない」と感じている方もいるのではないかと思います。

それは正直な感覚です。母子登校の長期化は、知識を得るだけでは変わりにくいケースが多いです。なぜなら、変えなければいけないのは「理解」ではなく、毎朝の現実の場面で起きる「判断と行動」だからです。

子どもの状態を見極めながら段階を設計する、親自身の関わり方を整える、子どもに自分で動く経験を積ませながら安心の土台も作る——これらを同時に、子どもの反応を見ながら調整し続けることは、一人でやるには複雑すぎることがあります。

みちびきでは、今の状況を整理するところから始めます。子どもの状態の見立て、家庭内で起きているパターンの整理、関わり方と段階の設計、そして変化の過程での伴走。これらをその家庭の状況に合わせて、一緒に考えていきます。

「まず状況を話してみたい」という段階からのご相談でも構いません。親御さんだけでのご相談から始めることができます。

「もう少し自分でやってみよう」と思うことも、自然な判断です。
ただ、その中で同じ朝のやり取りが繰り返されているなら、一度立ち止まって整理するタイミングかもしれません。状態が固定するほど、変化には時間がかかります。

母子登校が解消しない状態には、必ず理由があります。その理由を正確に見立て、その家庭に合った形で動き始めること——それがみちびきの支援の出発点です。一人で抱え込まず、まず現状を整理することから始めてみてください。

ここまで読んで、「なるほど」と感じた方もいると思います。

ただ一方で、
「うちも似ているけれど、これだけでは説明できない気がする」
と感じている方もいるのではないでしょうか。

実際には、運動会の練習やダンスなど、特定のきっかけで
それまで問題なく通えていた子が急に崩れるケースもあります。

こうしたケースは、単純な「不安」や「苦手」だけでは説明できないことも多く、
関わり方を間違えると、そのまま長期化してしまうこともあります。

👉 このような実例については、こちらの記事で詳しく解説しています。

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Profile

佐藤 博

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)

15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)

家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。

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