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運動は好きなのに「ダンスがつらい」|運動会の練習がきっかけで母子登校になった実例

  • 2026/05/15
  • 2026/04/28

「うちの子、運動は得意なんです。でも、なぜか運動会の練習が始まってから変わってしまって」

こういう言葉を聞くとき、「運動が苦手だから行きたくない」という話ではないことが分かります。だからこそ、親御さんも戸惑う。「走るのは速いのに、どうしてダンスだけでこんなに崩れるの?」と。

この記事では、運動が得意だった子どもが運動会のダンス練習をきっかけに行き渋りを始め、母子登校になっていったケースを紹介します。フィクションではありませんが、個人が特定されないよう状況を一部変更しています。

「うちはまだ大丈夫」と思っている方にこそ、読んでいただきたい内容です。

ケース紹介——何が起きたのか

4月:問題なく通えていた

小学3年生のAくんは、活発で体を動かすことが好きな男の子でした。外遊びが大好きで、足も速く、体育の授業ではいつも元気に動き回っていました。

4月の入学当初から、特に大きな問題はありませんでした。新しいクラスにもすぐに馴染み、友達もでき、毎朝一人で登校していました。お母さんは「今年は大丈夫そう」と感じていたと言います。

GW明け:小さな違和感

GWが明けた頃から、少し様子が変わり始めます。「なんか疲れた」「学校めんどくさい」という言葉が増えました。ただ、休みたいと言うほどではなく、毎朝ちゃんと行けていました。

お母さんは「長い休みのあとだから仕方ない」と思っていました。実際、多くの家庭でGW明けに似たようなことが起きるため、そう判断するのは自然なことです。

5月中旬:運動会の練習が始まる

5月の半ばを過ぎたあたりから、学校では運動会の練習が本格化します。かけっこやリレーについてはAくんに問題はありませんでした。足が速いこともあり、その練習には積極的に参加していました。

変化が出始めたのは、ダンスの練習が始まってからです。

ダンス練習が始まって崩れていく

Aくんが通う学校の運動会では、全学年で踊る創作ダンスがあります。振り付けを覚えて、音楽に合わせて全員で踊る、あの種目です。

最初は「ダンスの振り付け覚えるの難しい」と言っていた程度でした。ただ、練習が進むにつれて言葉が変わっていきます。「間違えたら恥ずかしい」「みんなに見られるのが嫌だ」「体育に行くのが憂鬱」。

ある日、Aくんは初めて「学校休みたい」と言いました。

行き渋りが始まる

最初のうちは、朝だけ渋る程度でした。少し時間がかかっても、お母さんが「大丈夫、行けるよ」と声をかければ学校には行けていました。

でも一週間が過ぎた頃から、「お母さんも一緒に来て」という言葉が出てきます。「校門まで一緒に来てくれれば行ける」という約束で付き添いが始まりました。

翌週には「昇降口まで」、その次には「教室の前まで」。付き添いの範囲が少しずつ広がっていきます。

運動会が終わっても、付き添いは続きました。「運動会が終われば戻るだろう」というお母さんの予測は、外れてしまいました。

親の対応——どう関わっていたか

この間、お母さんはどう対応していたでしょうか。

最初は励ましていました。「練習は全員同じだから大丈夫」「間違えてもいいんだよ」「Aくんは足が速いから運動会は得意でしょ」。善意からくる言葉です。

次に様子を見ました。「もう少し経てば慣れるかもしれない」「今は強く言わない方がいい」という判断です。これも、子どもへの配慮からきた対応です。

そして付き添いが始まった後も、「今日だけ」「今週だけ」と思いながら続けていました。「付き添えば行けるのだから、それでいい」という安心感もあったかもしれません。

この流れは、多くの親御さんが通る道です。励まして、様子を見て、付き添う。どれも子どものことを思ってのことです。ただ、この流れが続く間に、状態は少しずつ固定されていきました。

なぜ起きたのか——ダンス特有の負荷

Aくんが「運動は好きだけどダンスが苦手」という話を聞いて、「ダンスセンスの問題」と思う方もいるかもしれません。ただ、本当にそうでしょうか。

ここに、この問題の核心があります。

「運動ができる」と「ダンスがつらい」は矛盾しない

かけっこは、速ければ評価されます。正解がシンプルで、努力がそのまま結果につながりやすい。Aくんはここが得意でした。

一方、ダンスは違います。振り付けに「正解」があり、全員が同じ動きをすることが求められます。自分の体が思うように動かせるかどうかより、周りと「合っているかどうか」が問われます。

しかも、練習中は常に他の子の動きが目に入り、「あの子は上手だ」「自分は遅れている」という比較が起きやすい。本番では保護者の前で全員に見られます。

体を動かすことの負荷ではなく、「見られること」「評価されること」「正解に合わせなければならないこと」への心理的な負荷が、ダンスには特に集中しています。
このような場面は、「できるかどうか」ではなく「どう見られるか」が強く意識されるため、子どもによっては強い心理的負荷になります。

体の得意・不得意と心理的負荷は別の問題

Aくんにとって、ダンスは「体が動かない」問題ではなく、「見られる・評価される・合わせなければいけない」という心理的な場面が苦手だったのです。

運動が得意であっても、この種の負荷に弱い子はいます。むしろ、「自分は運動ができる」という自己イメージが強い子ほど、「できない自分を見せたくない」という恐れが強くなることがあります。

「得意なのにできない」という感覚が、「失敗が恥ずかしい」「見られたくない」という強い回避につながりやすいのです。

構造での説明——なぜ長引いたのか

Aくんのケースを、構造として整理するとこうなります。

ダンスへの不安が高まる→学校に行くことを回避したくなる→お母さんが付き添うことで行ける→「付き添いがあれば行ける」という状態が固まる→付き添いがないと行けない→付き添いをやめようとすると崩れる→また付き添う。

この状態は、気づかないまま続けていると、短期間で固定されてしまうこともあります。

運動会が終われば元に戻る、と思いやすいのは、「原因が運動会だった」という見方をしているからです。ただ、本当に起きていたのは「付き添いがなければ動けないという状態の固定」でした。運動会が終わっても、固定した状態は変わりません。

付き添いは問題の解決ではなく、問題の先送りだったのです。これは、お母さんを責めているのではありません。多くの家庭でこのパターンは起きます。そしてそれは、愛情から生まれた対応が、意図せずループを強めてしまったという話です。

非認知能力の視点から見ると

非認知能力とは、テストの点数では測れない、感情を整える力や自分で行動する力など、日常の中で使う力のことです。

Aくんのケースでもう一つ見えてくるのは、非認知能力の問題です。

自己調整力——不安が来たとき、自分で気持ちを整えて動く力——が育っていなかった場合、不安を感じるたびに外からのサポートが必要になります。お母さんの付き添いは、この不安を外から解消する役割を担っていました。

行動の起点——自分で「やってみよう」と動き始める力——は、「誰かがいれば動ける」が続くほど弱くなっていきます。付き添いがあれば動けるという経験が積まれるほど、付き添いなしで動く感覚が遠くなります。

不安耐性——不安を感じながらでも一歩踏み出せる力——は、不安があるたびに回避することで育ちにくくなります。ダンス練習への不安を、付き添いという形で回避し続けたことで、「不安があっても大丈夫だった」という経験が積まれませんでした。

これらの力は、この記事で詳しく書くより、別の角度から整理した記事があります。母子登校と非認知能力の関係について深く知りたい方は、「母子登校はなぜ解消しないのか」の記事もあわせて読んでみてください。

よくあるズレ——関わり方の落とし穴

Aくんのケースで、親御さんがやりがちだった関わりには、いくつかのズレがありました。

ここで起きやすいのが、「正しい言葉をかけているのに、子どもには届いていない」というズレです。

「運動が得意だから、ダンスもできるはず」という前提で励ましていたこと。体の能力と心理的負荷は別の話ですが、「得意な子だから乗り越えられるはず」という判断が、子どもの本当の負荷を見えにくくしていました。

「大丈夫、間違えてもいい」という励ましが続いたこと。これは言葉としては正しいのですが、子どもにとっては「親には本当の気持ちが伝わっていない」と感じることがあります。「間違えたくない」という恐れを受け止めてもらえていない、という感覚です。

付き添いを「とりあえず今日だけ」と続けたこと。一日一日の判断は合理的に見えても、それが積み重なると「付き添いがなければ行けない」という状態が固まっていきます。

対応の方向性——何が必要だったか

このケースで必要だったのは、大きく3つの方向性です。

一つ目は、引き離さないことです。急に付き添いをなくすことは、逆効果になりやすいです。不安の土台がない状態で距離を縮めようとすると、状態が急激に悪化することがあります。

二つ目は、固定させないことです。付き添いを「今日も続ける」という選択をするとき、同時に「どこを変えていくか」を考えることが必要です。付き添いながら何も変わらない状態が続くほど、ループは深まります。

三つ目は、段階的に進めることです。「校門まで→昇降口まで→教室の前まで→一人で行く」という段階は、子どもの状態を見ながら設計する必要があります。焦って段階を飛ばすと崩れます。遅すぎると固定が進みます。このタイミングの見極めが、最も難しい部分です。

母子登校の「やめ方」や「いつまで続けるべきか」と悩むときも、単に付き添いの距離を変えるだけではなく、この構造をどう変えるかを見ることが重要です。

このケースの結末

Aくんの家庭では、途中からみちびきに相談が来ました。その時点では母子登校が3ヶ月続いており、「このまま続けていいのか分からなくなった」というお母さんの言葉がありました。

支援の中でまず取り組んだのは、Aくんの状態の見立てと、付き添いの意味を整理することでした。「付き添いをやめる」ではなく、「付き添いながら何を変えるか」を設計しました。

Aくんが「一人でここまで行けた」という小さな経験を積み重ね、お母さんの関わり方が「安心を与える」から「一緒に考える」へと変わっていく中で、少しずつ付き添いの範囲が縮まっていきました。

完全に一人で登校できるようになるまで、数ヶ月かかりました。ただ、最終的にAくんは自分で動けるようになりました。その過程で得た「自分でできた」という経験は、次の不安な場面でも力になっています。

すべてのケースがこうなるとは言えません。子どもの状態や家庭の状況によって、時間も方法も変わります。ただ、「早く動き始める」ことが、回復への道を短くした一つの要因だったことは確かです。

今の関わりで、この状態は変わるのか?

Aくんのケースを読んで、「うちの子はまだここまでじゃない」と思った方もいるかもしれません。

ただ、Aくんも最初は「朝だけ少し渋る程度」でした。それが3ヶ月で母子登校になりました。変化のスピードは、子どもによって違いますが、ループが始まった後は思っているより早く固定されることがあります。

「今のうちに関わり方を整えておく」ことと、「固定してから変えようとする」ことでは、必要な時間と労力がまったく違います。

今の関わり方を続けた先に、どんな状態が見えているでしょうか。

同じ状態になる前に、一度整理してみてください

この記事を読んで、「うちも似たような流れかもしれない」と感じた方、または「すでにこの状態になっている」という方に、伝えたいことがあります。

一人で判断し続けることには限界があります。子どもの状態を見極めながら、付き添いの段階を設計しながら、自分の関わり方も整えながら——これを毎朝の現実の中でやり続けることは、多くの場合、一人では難しいです。

みちびきでは、今の状況を一緒に整理するところから始めます。「うちの子はどのタイプなのか」「今の付き添いはどう変えていけばいいのか」「何から始めればいいのか」——こうした問いに、状況に合わせた形で一緒に考えていきます。

親御さんだけのご相談から始めることができます。「まず話を聞いてもらいたい」という段階でも、ご連絡ください。状態が固定する前に動き始めることが、最も大切な一歩です。

「もう少し様子を見よう」と思っている間に状態が固定してしまうケースもあるため、違和感を感じている段階での整理が大切です。

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Profile

佐藤 博

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)

15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)

家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。

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