夏休みになれば元気になる?|9月につながる不登校・行き渋りの子どもの夏休みの過ごし方
- 2026/07/07
- 2026/07/02

「夏休みに入れば、きっと元気になる」——本当にそうでしょうか
1学期を何とか乗り越えた。夏休みに入れば一息つける。子どもも回復するはず。
そう思いながら、夏休みを迎える親御さんは多いと思います。
でも、支援の現場で毎年繰り返し見えてくることがあります。
夏休みに一時的に落ち着いた子どもが、9月になった瞬間にまた動けなくなる。あるいは、夏休み中も不安が消えず、8月下旬から崩れ始める。「なぜまた?」と途方に暮れる親御さんの声を、毎年この時期に聞きます。
夏休みは、子どもにとって安心の期間である。それは間違いではありません。ただ、夏休みは「9月を左右する準備期間」でもある、という視点を持つことが、この夏の関わり方を大きく変えます。
この記事では、夏休みで学校のストレスが減ることの意味と限界、夏休み中に起きやすい変化、そして家庭で今年の夏に整えたいことをお伝えします。
夏休みで学校ストレスは確かに減る
まず、夏休みに入ると子どもが落ち着く理由を整理しておきます。
学校という場所には、複数のストレス源が同時に存在しています。
- 学業のプレッシャー(授業・テスト・提出物)
- 人間関係(友達・先生・グループ)
- 集団生活のルール(時間割・給食・体育)
- 感覚的な負荷(教室の騒音・人の多さ・移動)
夏休みに入ると、これらが一気になくなります。
それだけではありません。
真面目な子ほど、「みんなは学校に行けているのに、自分だけ行けていない」という状況をうまく割り切れず、自分自身に「普通のことができない子」というレッテルを貼ってしまうことがあります。
しかし、夏休みになると、学校はみんなが休みになります。「自分だけ行けていない」という比較から一時的に離れられるため、気持ちが少し軽くなったり、表情が柔らかくなったりする子どもも少なくありません。
支援の現場でも、「夏休みに入ってから笑顔が増えた」「以前より穏やかに過ごせるようになった」という変化を見せる子どもは少なくありません。
文部科学省の調査でも、不登校の子どもの多くが「学校にいる間の不安や緊張」を登校困難の理由として挙げています。夏休みはその緊張源がなくなる期間ですから、多くの子どもが夏休みに入ると表情が明るくなり、よく眠れるようになり、家での会話が増えます。
これは事実です。そして、それ自体は良いことです。
ただし「ストレス源がなくなった」=「回復した」ではない
ここが、この記事でもっとも大切なポイントです。
夏休みに落ち着いた理由が「学校のストレスが一時的になくなったから」であれば、9月に学校が再開した瞬間に、同じストレスが戻ってきます。
ストレス源がなくなった状態と、ストレスに対応できる状態は、まったく別のことです。
たとえば、朝が来るたびに強い不安を感じる子どもがいるとします。夏休み中は朝に「学校に行く」という課題がないので、不安は出てきません。でも、その不安への対処が育ったわけではありません。9月になって登校という課題が戻れば、不安も戻ります。
支援の現場では、これを「夏休みでリセットされた」ではなく、「夏休みで一時停止した」と見ます。
一時停止の間に何を整えるか——それが、9月以降を変えます。
夏休み明けは年間でもっとも負荷が高い時期
もう一つ、知っておいてほしいことがあります。
毎年、夏休み明けの時期は、子どもにとって大きな負荷がかかりやすいタイミングです。
文部科学省の不登校児童生徒の実態把握に関する調査では、夏休み以降に「ほとんど学校に行っていない」「まったく学校に行っていない」と回答した子どもが一定割合いることが示されています。
また、こどもの自殺対策に関する資料でも、学校の長期休業明けは自殺予防を強化すべき時期として位置づけられています。
こうした数字をお伝えするのは、不安を煽るためではありません。夏休み明けは、それだけ子どもにとって負荷が戻りやすい時期であり、夏休み中の家庭の関わりが重要になることをお伝えしたいからです。
夏休み中の家庭の関わりが、9月以降の子どもの状態に直結している——そのことをお伝えしたいからです。
夏休みは「学校を忘れる期間」ではなく、「9月に向けて家庭を整える期間」として使えるかどうかが、秋以降の大きな分岐点になります。
夏休みに起きやすい3つの変化
夏休みを「一時停止」のままにしてしまいやすい、3つの変化を押さえておきましょう。
生活リズムの乱れ
夏休みは時間割がなくなります。起きる時間・寝る時間・食事の時間が崩れやすくなります。
日本睡眠学会や小児科学会でも指摘されていますが、睡眠リズムの乱れは情緒の不安定さ・集中力の低下・朝の起きにくさに直結します。特に、就寝時間が2時間以上ずれると、体内時計のリセットに数日〜1週間かかります。
8月下旬に「そろそろ学校モードに戻そう」と思っても、生活リズムが崩れきっていると、体が追いつきません。これが、9月最初の朝の「動けなさ」につながることがあります。
親子関係の変化
学校がない分、家庭で過ごす時間が増えます。これは、親子の関わりが良い方向に動くチャンスでもありますが、同時に、家庭内のやり取りの固定パターンが強化されやすい時期でもあります。
「朝は起こしてもらう」「困ったら親に言えばやってもらえる」「嫌なことは避ける」といったパターンが夏休み中に定着すると、9月になってもそのパターンのまま登校に向き合うことになります。
親が善意で手を出しすぎると、子どもが自分で考える経験が積まれにくくなる——これは夏休み中にとくに起きやすいことです。
ゲーム・スマホの使いすぎによる生活の偏り
夏休み中にゲームやスマホの時間が一気に増えるご家庭は少なくありません。
「夏休みくらいは」という気持ちは分かります。ただ、夜遅くまでゲームをして睡眠が削られる・日中の活動量が減る・達成感や役割感が得られないまま過ごすという状態が続くと、9月に学校という場の負荷に対応しにくくなります。
問題はゲームそのものではなく、生活全体のバランスが偏ることです。
支援現場で見える2つのパターン
夏休みを経て、9月以降の状態が変わる子どもには、大きく2つのパターンがあります。
夏休みで回復し、9月に動きやすくなる子
このパターンの子どもには、共通点があります。
1学期の疲れや緊張が主な原因だった。夏休みに十分な休息が取れた。生活リズムが大きく崩れなかった。親子の会話が増え、子どもが気持ちを少し言葉にできた。学校でのしんどさが何だったかを、夏休み中に少し整理できた。
こういった条件が重なったとき、9月に「少し動けるかもしれない」という状態で迎えられることがあります。
夏休み明けに悪化する子
一方、夏休み明けに一気に崩れるパターンもあります。
8月中旬を過ぎた頃から、9月のことが頭にちらつき始める。夜に眠れなくなる。生活リズムが戻らない。夏休み中ずっと学校の話題を避けてきたために、9月になって突然向き合う形になる。
また、夏休み中に家庭でのやり取りが「親が全部決める・全部やる」状態で固定されてしまったために、9月に自分で動く余地がなくなっているケースもあります。
どちらのパターンになるかは、子どもの特性だけで決まるものではありません。夏休み中に家庭で何が起きていたかが、大きく影響しています。
夏休みは家庭教育のゴールデンタイム
学校がない夏休みは、見方を変えれば、家庭を整えやすい時期です。
時間割に追われない。宿題の締め切りに毎日追われない。朝の登校バトルがない。そのぶん、親子でゆっくり話す時間が取れる。子どもが自分のペースで動ける場面を作れる。家庭の中で小さな練習ができる。
関連記事:家庭教育とは?不登校・行き渋りの家庭で大切にしたい「自立を育てる関わり方」
みちびきでは、夏休みを「学校を忘れる期間」ではなく、「家庭を整えるゴールデンタイム」と考えています。
この夏に育てたい非認知能力の3つの力
夏休み中に、特別な訓練は必要ありません。日常の中に、小さな練習を取り入れることが大切です。
関連記事:非認知能力とは?不登校・行き渋りの子どもに家庭で育てたい「生きる力」
自分を高める力
目標に向かって少しずつ取り組む力・続ける力・できた経験を積む力です。
夏休み中は、こういった場面を意図的に作れます。
- 朝ごはんの準備を一品だけ担当する
- 自分の洗濯物を自分でたたむ
- 夏休みの宿題を「今日はここまで」と自分で決めて取り組む
- 「今日何をするか」を朝に自分で決める
結果より「自分で決めてやれた」という経験を積むことが目的です。できたかどうかより、やろうとしたかどうかを見てください。
自分と向き合う力
不安を言葉にする力・気持ちを整理する力・失敗から立て直す力です。
夏休みは、1学期の振り返りをするのにちょうどよい時期です。
「1学期、一番しんどかったのはどんな場面だった?」 「どんなときが少しマシだった?」 「9月、もし一つだけ変えられるとしたら何?」
答えを急かさず、一緒に考える姿勢で聞いてみてください。うまく言葉にできなくても、「言おうとした」こと自体が練習になります。
他者とつながる力
助けを求める力・相談する力・気持ちを伝える力です。
夏休み中に、こんな練習ができます。
- 「困ったことがあったら、どう言う?」を家庭で一緒に考える
- 親に「手伝ってほしい」と言える場面を作る
- 家族の中で、自分の意見を一つ言う機会を作る(夕飯のメニュー・週末の予定など)
「学校で言えるかどうか」より前に、「家の中で言えた」という経験が土台になります。
夏休みに親がやってはいけないこと
良かれと思ってやってしまいがちなことを、正直にお伝えします。
生活リズムを完全に放置する 「夏休みくらい自由に」という気持ちは分かります。ただ、起床・就寝・食事が大きく崩れたまま8月後半を迎えると、9月の朝に体が動きません。完全な管理は必要ありませんが、おおまかなリズムは保ちましょう。
ゲームやスマホだけを制限して、他は何もしない 「ゲームは1日1時間」と決めるだけでは、生活全体は変わりません。何をするか・何に取り組むかが大切です。禁止よりも、「他にできること」を一緒に考える方が機能します。
毎日学校の話を持ち出す 「9月はどうするの?」「学校のこと考えてる?」——善意からの問いかけでも、毎日続くと子どもにとって圧になります。学校の話は、子どもが自分から出したときに受け止める。それで十分です。
宿題だけを管理して、あとは親が全部やる 宿題の進捗を確認することと、宿題以外のすべてを親が整えてしまうことは違います。食事・洗濯・準備・予定——こういったことを親が全部やり続けると、子どもが「自分でできる」という感覚を持ちにくくなります。
「夏休みだから大丈夫」と問題を先送りにする 1学期に気になっていたこと——友達関係、特定の授業への不安、感覚的な負荷——を「夏休みだからひとまず忘れよう」と先送りにすると、9月に同じ負荷がそのまま戻ってきます。
夏休みに入る前に、一度振り返ってほしいこと
夏休みが始まる前に、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
この1学期、子どもは本当に笑えていましたか?
頑張りすぎていませんでしたか?
「大丈夫」と言いながら、消耗していませんでしたか?
家庭は、子どもにとって安心できる場所でしたか?
親自身は、毎朝の対応に疲れていませんでしたか?
責めるためではありません。現状を正直に見るための問いです。
1学期で負荷になっていたことをメモしておく。夏休みに入ってから整えたいことを一つ決める。それだけで、夏休みの過ごし方が変わります。
関連記事:夏休み前に「学校に行きたくない」と言う子どもへ|行き渋りが増える理由と親の対応
医療・発達特性・学校環境の視点も必要
夏休み中に家庭で整えられることは多くありますが、家庭教育だけで全てが解決するわけではありません。
以下のような状態が続いている場合には、夏休み中に医療機関・発達相談・学校との連携を検討することが必要です。
- 夏休みに入っても強い不安や抑うつが続いている
- 睡眠や食欲が大きく崩れたまま回復しない
- 感覚過敏が強く、家庭での生活にも支障が出ている
- 発達特性が背景にありそうで、専門的な見立てが必要と感じる
- 1学期にいじめや強い叱責があった可能性がある
- 家庭だけで抱えようとして、親自身が限界に近い
夏休みは、外部機関につながりやすいタイミングでもあります。学校が始まってから動こうとすると、忙しさで後回しになりがちです。夏休み中に相談の予約を入れておくことが、9月以降の動きやすさにつながります。
みちびきでできること
みちびきでは、不登校・行き渋り・母子登校に悩む家庭に対して、家庭教育・非認知能力・家族療法的視点をもとに、今の家庭に合った現実的な一歩を一緒に整理しています。
夏休みは、子どもだけでなく、家庭全体を見直すことができる期間です。
みちびきでは、こういった視点で一緒に考えます。
- 1学期で何が負荷になっていたかを整理する
- 夏休み中に家庭でできる小さな練習を一緒に考える
- 親子のやり取りの固定パターンを見直す
- 9月に向けて、現実的な一歩を準備する
- 子どもだけを変えようとしない。親を責めない。家庭全体の関わり方を見る
目指すのは「9月に登校できること」だけではありません。親も子どもも、少しずつ自分で考えて動けるようになっていく家庭です。
夏休みが終わってから動こうとするより、夏休み中に一度整理しておく方が、9月以降がずっと動きやすくなります。
「この夏、何から手をつければいいか分からない」「9月が不安で仕方ない」という方は、一人で考え込まずにご相談ください。
うまく説明できなくても大丈夫です。今の状況をお聞きしながら、この夏に家庭で整えられることを一緒に考えます。
夏休みが終わる前に、一度話してみませんか。
プロフィール

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)
15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)
家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。











