不登校・母子登校を相談すると何をする?|支援でまず行う「見立て」とは
- 2026/09/15
- 2026/09/18

「相談したら、何を言われるんだろう」
不登校や行き渋り、母子登校について、相談を考えるとき、多くの親御さんが、まずこの不安を抱きます。
休ませてください、と言われるだけなのでは。逆に、もっと学校へ行かせた方がいいと言われるのでは。親の関わり方が悪いと言われるのでは。子ども本人は相談を嫌がっているけれど、大丈夫なのか。そもそも、何を相談すればいいのかも、よく分からない。
みちびきでは、相談を受けた時点で、「この家庭にはこの対応が正解です」と決めることはありません。
最初に行うのは、「何をすればいいか」をすぐに決めることではなく、「この子、この家庭に、今何が起きているのか」を整理することです。
これまでの経過や現在の状態、学校生活、家庭での関わりなどの情報を整理し、それぞれが今の状態にどう影響しているのかを考え、必要な支援について仮説を立てていく。みちびきでは、この過程を「見立て」として大切にしています。
この記事では、実際に何を見て、そこからどのように支援を考えているのかを具体的にお伝えします。
同じ「学校に行けない」でも、必要な支援は同じではない
「朝になると学校へ行きたくないと言う」という状態だけを見ても、その背景は分かりません。
学校で嫌なことがある。学習についていくのが難しい。人間関係に強い緊張がある。身体症状が出ている。生活リズムが崩れている。不安がとても強い。本人の発達的な特性が、学校生活での困りごとに関係している。親から離れることへの不安が強い。自分で判断して動く経験が、まだ少ない。これまで、親の援助によって何とか登校できていた。
こうした可能性は、いくつも考えられます。
そのため、「学校に行きたくない」だから「休ませましょう」とも、「母子登校」だから「親が離れましょう」とも、単純には判断しません。同じ状態に見えても、背景が違えば、必要な支援も違ってくるからです。
みちびきは何を「見立てる」のか
見立てというと、抽象的に聞こえるかもしれません。実際には、次のようなことを、一つずつ具体的に整理していきます。
子どもの現在の状態
体調、睡眠、食事、身体症状、気分、不安の強さ、学校について話したときの反応、家庭での様子。
これらを見るのは、今、この子にどの程度の負荷がかかっているのかを把握するためです。同じ「行き渋り」でも、睡眠や食事、身体症状などにも大きな変化が出ている状態と、比較的落ち着いて生活できている状態とでは、まず必要な対応が異なります。
これまでの経過
いつ頃から様子が変わったのか。最初のきっかけは何だったのか。1学期まではどうだったのか。以前にも同じようなことがあったのか。良くなった時期、悪くなった時期があるとすれば、そのとき家庭や学校で何が起きていたのか。
今の一場面だけを見るのではなく、時間の流れの中で見ていきます。同じ「今日行けなかった」という出来事も、突然始まったことなのか、長く続いてきたことの延長なのかで、意味合いが変わってきます。
学校・友人・学習環境
先生との関係、友人関係、クラスの雰囲気、授業、学習上の困難、行事、集団活動、いじめの可能性。
家庭の対応だけを考えるのではなく、学校生活の中に、具体的な困りごとがないかを見ます。ここは家庭からは見えにくい部分でもあるため、必要に応じて、学校側との情報共有も検討します。
発達や本人の特性
不安の強さ、感覚面の特徴、こだわり、認知的な特徴、コミュニケーションの取り方、環境の変化への適応のしやすさ。
ここで、みちびきが診断を行うことはありません。気になる特徴がある場合は、必要に応じて、医療機関や発達支援などの専門機関での評価を検討することも、選択肢としてお伝えします。
家庭・親子の関わり
朝、どのようなやり取りをしているか。親がどこまで支援しているか。本人がどこまで自分で行っているか。困ったとき、誰がその都度解決しているか。親子それぞれが、どんな役割になっているか。家庭の中で、同じパターンが繰り返されていないか。
ここを見ることは、「親の関わりが原因だ」と決めつけるためではありません。この点については、あとの章であらためて説明します。
本人の「今できること」
できないことだけでなく、何なら一人でできるのか、どこまでなら自分で判断できるのか、どこから支援が必要なのかを見ます。
「できないことを、全部大人が代わりにやる」のでも、「全部を本人に任せる」のでもなく、今、この子に必要な支援の量を見極めるという考え方です。
例えば「母子登校」でも、見立てによって対応は変わる
ここで、一つのモデルケースをもとに考えてみます。以下は、説明のために作成した架空の例であり、実際の支援事例ではありません。また、実際の相談では、複数の要因が重なっていることも少なくありません。
小学2年生。1学期から母子登校が続いています。朝は「ママと一緒じゃないと行けない」と言い、母親が教室まで付き添えば、学校では過ごせています。
表面的には、同じ「母子登校」という状態です。ただ、その背景によって、必要な支援はまったく違ってきます。
ケースA:現在は親の付き添いが必要な状態
不安が強く、現時点では親の付き添いがあることで登校や学校での活動が可能になっている場合です。この場合、「自立させるために、明日から一人で行かせる」とはしません。何に不安を感じているのか、どんな場面なら一人でも過ごせているのか、親がそばにいることで何が可能になっているのかを整理し、今、必要な支援を急に取り上げないようにします。
ケースB:本人ができることまで親が支えている状態
当初は必要だった付き添いや手助けが続く中で、子ども自身は少しずつできることが増えているものの、支援の仕方が以前と同じままになっている場合があります。
この場合も、いきなりすべての支援をなくすわけではありません。この場合も、いきなりすべての支援をなくすわけではありません。今も必要な支援と、本人がすでにできる部分、少し支援を減らせばできそうな部分を分け、様子を見ながら、親がすることから本人がすることへ、少しずつ返していきます。
ケースC:学校生活の特定の場面に困難がある状態
特定の授業、先生との関係、友人関係、集団活動、教室での過ごし方など、学校生活の中の特定の場面に、本人が不安や難しさを感じている場合です。
この場合、「学校側の問題だから、学校に対応してもらう」だけでは終わらせません。まず、どの場面で困っているのか、その場面の何が不安なのか、何が起きると動けなくなるのか、反対にどんな条件なら取り組みやすいのか、どのような条件や段階なら、本人が「やってみよう」と思えるのかを、一つずつ具体的に整理します。
そのうえで、どうすれば本人にとって取り組みやすくなるのかを、本人と一緒に考えます。必要に応じて学校とも情報を共有・調整しますが、環境を整えるだけで終わりにはしません。困難を整理する、本人と方法を考える、取り組めそうな小さな段階を決める、実際にやってみる、どうだったか振り返る、必要なら方法を修正する。この流れを、実際の学校生活の中で試せるところまで、段階を追って支えます。
大人がすべての困りごとを取り除くことだけを目的にするのではなく、本人自身が「自分は何に困っているのか」「どうすれば取り組みやすくなるのか」「うまくいかなかったら次にどうするのか」を考え、実際に試してみる経験を重ねながら、自分なりに対処できることを少しずつ増やしていく。そこまでを支援の一部として考えています。
ケースD:医療・専門機関の視点が必要な状態
強い身体症状、著しい気分の落ち込み、発達面について専門的な評価が必要と考えられる場合など、家庭教育や学校との調整だけで判断・対応すべきではない可能性がある場合です。
この場合、みちびきの支援だけで解決しようとはしません。必要に応じて、医療機関や発達支援などの専門機関への相談・受診を検討し、専門的な評価が必要な領域と、家庭で取り組める領域を混同しないようにします。専門機関による評価や支援を受けながら、並行して家庭でできることを整理していく場合もあります。
表面上は、どのケースも「母子登校」です。しかし、なぜ母親の付き添いが必要になっているのか、その子がどこで困っているのか、そして今どこまで自分でできるのかによって、必要な支援は変わります。
A〜Dは、子どもを分類するための診断ではなく、見立てによって対応が変わることを説明するための例です。実際の相談では、これらの要素が複数重なっていることも多くあります。
「親の関わりを見る」=親を原因にする、ではありません
家庭教育支援と聞くと、「結局、親が悪いと言われるのでは」と身構えてしまう方もいます。
みちびきが家庭での関わりを見るのは、「親が原因だから」ではありません。一方で、「親は悪くないのだから、何も変える必要はない」とも考えていません。
大切なのは、責任を追及することではなく、今の親子のやり取りの中で、何がうまく機能しているのか、何が悪循環になっているのか、親が支えたほうがよい部分はどこか、本人に任せたほうがよい部分はどこか、家庭の中で変えられることは何かを、整理することです。
「なぜこうなったのか」という原因と、「今から変えられること」は、必ずしも同じではありません。過去の原因を特定できなくても、今の関わりの中で調整できる部分は見つかることがあります。見立てで大切にしているのは、原因を一つに決めることではなく、今の状態に影響しているものを整理し、その中から、今働きかけられる部分を見つけることです。
見立てたあと、実際に何をするのか
見立てて終わり、ではありません。

状況を整理する。今、優先すべき課題を決める。家庭での具体的な対応を考える。必要に応じて、子ども本人とも一緒に取り組む。実践する。子ども、親、家庭の変化を見る。必要に応じて、見立てや対応を修正する。
この流れを繰り返していきます。一度の相談で、すべてを断定するわけではありません。子どもも、家庭も、学校環境も、時間とともに変わっていくため、最初に立てた見立てが今も合っているかどうかを、実際の変化を見ながら確かめ、必要であれば調整していきます。
支援者が答えを一方的に押しつけるのではなく、最終的には、親御さん自身が子どもの状態を見ながら考えられるようになること、子ども自身も困ったときに考え、対処できるようになること、そして、家庭が支援者に頼り続けなくても動けるようになることを目指しています。
みちびきだけで対応しないケースもあります
みちびきでは、「何でも家庭教育で解決できる」とは考えていません。
強い身体症状、著しい気分の落ち込み、自傷や希死念慮、発達面について専門的な評価が必要な可能性、いじめ、学校側の重大な問題など、家庭教育の範囲を超えて、医療や専門機関による評価・対応が必要と考えられる状態があります。
こうした場合には、医療機関、学校、スクールカウンセラー、教育相談機関、発達支援などの、必要な機関につなぐことも検討します。「自分たちですべて解決すること」ではなく、「その子に今必要な支援は何かを判断すること」も、見立ての一部です。専門機関に任せきりにするのではなく、専門的な評価を踏まえながら、家庭でできることをあわせて整理していく場合もあります。
「まだ相談するほどではない」と思っている段階でも構いません
相談の対象は、いわゆる「完全な不登校」だけではありません。
行ける日もある。遅刻すれば行ける。母子登校ならできている。学校の門までは行ける。朝だけ毎日大変。家庭では荒れるけれど、学校では普通に過ごしている。本人は「大丈夫」と言っている。何に困っているのか、親自身もうまく言葉にできない。
こうした状態のご家庭からも、多くのご相談をいただいています。
相談する前に、「原因はこれだと思う」「この対応をしてほしい」と、親御さん自身が整理しておく必要はありません。むしろ、「何が起きているのか、よく分からない」というところから、一緒に整理していくことも、相談の役割のひとつです。
「まだ相談するほどではないかもしれない」と感じている方には、こちらの記事もあわせてご覧いただけます。
→ 関連記事:「まだ相談するほどじゃない」と思っている親御さんへ
まとめ|「何をすればいいか」の前に、「何が起きているか」を見る
不登校だから休ませる。母子登校だから親が離れる。行き渋りだから学校へ行かせる。
このように、表面に現れている状態だけから対応を決めることはできません。同じ行動でも、なぜそうなっているのか、何に困っているのか、今どこまでできるのかによって、必要な支援は変わります。
だからこそ、「何をすればいいですか」という答えを探す前に、「この子、この家庭に、今何が起きているのか」を整理する。それが、みちびきの支援の出発点です。
自分たちだけでは、状況の整理が難しいと感じている。いろいろ試してきたけれど、次に何を変えればいいのか分からなくなっている。そうしたご家庭にとって、第三者と一緒に整理することも、選択肢のひとつです。
「行ける日もあるから、まだ相談するほどではない」「母子登校できているから、もう少し様子を見た方がいいのかもしれない」。そう感じている段階でも、ご相談いただけます。相談することが、そのまま支援の契約につながるわけではありません。
プロフィール

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)
15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)
家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。
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