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不登校支援はどう選ぶ?「同じ経験をした人」の話を聞くときに知っておきたいこと

  • 2026/09/01
  • 2026/08/25

「うちの子も、同じでした」

不登校や母子登校、行き渋りについて調べていると、こうした言葉に強く惹きつけられることがあります。

元不登校の当事者。
不登校の子どもを育てた保護者。
長く学校現場で子どもたちを見てきた教員。
スクールカウンセラー。
心理職。
発達支援に携わる人。
医療関係者。不登校や家庭教育の支援者。

SNSにも、書籍にも、動画にも、さまざまな立場からの発信があふれています。

そのどれもに、価値があります。当事者にしか分からない実感。現場を長く見てきた人だからこそ語れる知恵。専門知識に裏づけられた説明。どれも、大切な情報です。

ただ、ここで一度立ち止まって考えていただきたいことがあります。

自分自身やわが子には有効だった、ということと、別の家庭の子どもに何が起きているのかを見立て、その家庭に合った支援を組み立てられる、ということは、同じではありません。

これは、経験者や他の支援者を否定するための話ではありません。この記事で考えたいのは、「情報や支援を選ぶとき、発信者の肩書や経験だけでなく、わが子・わが家をどう見立ててくれるのかまで見てほしい」という、ごく実際的な視点です。

なぜ人は「自分と同じ経験をした人」の話が気になるのか

不登校になった子どもの親御さんは、この先どうなるのか分からない、自分の対応が正しいのか分からない、周囲になかなか理解してもらえない、という、先の見えにくい状況の中に置かれます。

社会心理学には、社会的比較理論と呼ばれる考え方があります。心理学者のフェスティンガーが1954年に提唱したもので、人は、自分の考えや能力を客観的な基準で確かめにくいとき、他者との比較を通して自分を評価しようとすること、またその際、自分とかけ離れた人よりも、自分に近い他者が比較対象になりやすいことなどが論じられています。

不登校のように「これからどうなるのか」「今の対応でよいのか」が分かりにくい状況で、似た経験をした人の情報が手がかりの一つになることは、不自然なことではありません。これは、情報収集が足りないからというより、先の見えにくい状況で手がかりを求める、自然な反応の一つと考えられます。

ただし、ここで注意しておきたいのは、「自分と似た経験をした人の話が気になる」ことと、「その人の話が、自分の家庭にそのまま当てはまる」こととは、別の話だということです。次の章で、この点を詳しく見ていきます。

経験談の価値と、経験談だけでは分からないこと

当事者による発信には、確かな価値があります。

孤独感が和らぐこと。この先も何とかやっていけるかもしれない、という感覚が持てること。生活の中での具体的な工夫や知恵が得られること。こうしたものは、専門的な支援だけでは埋めきれない部分を補ってくれます。

ピアサポート(似た経験を持つ人同士の支え合い)については、精神保健領域などを中心に、複数の系統的レビューやメタ分析が行われています。対象や支援の形式が異なるため、その結果を不登校の子どもや保護者への支援にそのまま当てはめることはできませんが、希望や回復感など一部の指標への効果が報告される一方、その効果の大きさや持続性については慎重な評価が必要とされています。

そのため、経験者による支えや情報には価値がある一方で、「その人に有効だった方法が、同じような状況に見える別の家庭にも有効である」ことまで、この研究から示されているわけではありません。

さらに、一つの家庭の成功体験を、別の家庭にそのまま当てはめることには、別の理由からも慎重さが必要です。ある子どもにうまくいった対応は、その子の年齢、特性、家庭環境、学校環境、それまでの経過など、多くの条件が重なった結果としてうまくいった可能性があります。条件が異なる家庭では、同じ対応が同じ結果を生むとは限りません。個別の事例から一般的な法則を導き出すことには、もともと限界があるということです。

「専門家なら安心」という話でもありません

では、経験者ではなく専門家に相談すればよいのかというと、話はそう単純でもありません。

教員には、学校という場での子どもの様子や、集団生活、学習、友人・教師との関係などを継続して見られる強みがあります。発達支援に携わる人には、発達特性や認知・感覚面などを専門的な視点から捉える強みがあります。心理職には、心理状態や認知・感情、対人関係などを心理学的な枠組みから捉える専門性があり、医療職には、身体面や医学的な要因を評価できる専門性があります。また、家庭を継続的に支援する立場では、家庭内でのやり取りや、日常生活の中で起きている相互作用を把握しやすい場合があります。

これは、それぞれの専門性が優れている、劣っているという話ではありません。どの立場から、どんな場面を、どれだけの期間見てきたかによって、見えやすいものと見えにくいものが、自然と分かれるということです。

資格の有無、肩書、経験年数、これまでに関わった不登校の子どもの人数だけでは、目の前のこの子とこの家庭に合った支援ができるかどうかは、決まりません。文部科学省が学校向けに出している通知でも、不登校児童生徒への支援にあたっては、不登校になった要因を的確に把握したうえで、学校関係者や家庭、必要に応じて医療・福祉などの関係機関が情報を共有しながら、児童生徒一人ひとりに応じたきめ細やかな支援策を立てることの重要性が示されています。一つの立場だけで完結させず、必要な視点を組み合わせていくことが、行政の方針としても位置づけられているということです。

経験の数だけでは測れないもの

多様な家庭・多様な子どもに、継続的に関わってきた経験には、確かに意味があります。

ただ、多くのケースに関わる価値は、「使える対応方法をたくさん知っていること」だけではありません。むしろ、「同じように見える状態でも、背景が違えば、同じ対応が持つ意味も変わる」ことを知っていることにあります。

例えば、「母子登校ならこうする」と方法から考えるのではなく、「なぜ、この子は母親と一緒なら学校に行けるのだろう」と、その行動がこの子にとってどのような意味を持っているのかを考える。多様なケースに触れることは、こうした複数の可能性を持って考えるための土台の一つになります。

一つの成功体験だけを頼りにするのではなく、「なぜこのケースではうまくいったのか」「なぜ別のケースではうまくいかなかったのか」「同じ行動に見えても、背景は違うのではないか」と、複数の可能性を持ちながら子どもを見られるようになることは、多くのケースに触れてきたからこそ育つ視点です。

ただし、「関わった人数が多いこと」が、そのまま「見立ての質の高さ」を意味するわけではありません。経験の幅広さに加えて、専門的な知識、目の前の状況を整理して見立てる力、その見立てを一つの仮説として扱い、実際の反応を見ながら修正していく力が、あわせて必要になります。経験の数は、そうした力を育てる土台のひとつではありますが、それだけで支援の質を保証するものではない、ということです。

同じ「母子登校」でも、背景が違うことがあります

ここで、架空の2つの家庭を例に考えてみます。実在する相談事例ではなく、説明のために作成した仮の例です。

A家庭は、小学校低学年のお子さんが母子登校をしています。よく見ていくと、学校での出来事そのものよりも、母親と離れること自体への不安が強く、母親の姿が見えなくなると強い不安を示す様子があります。

B家庭も、同じく小学校低学年のお子さんが母子登校をしています。ただしこちらは、教室での失敗経験や、友人関係、学校環境そのものへの不安が強く、母親が付き添うことで、何とか教室にたどり着けている、という状態です。

どちらも「母子登校」という同じ状態に見えますが、中心にある問題は違います。Aのお子さんでは、母親との分離に伴う強い不安をどう捉え、どのように安心して離れられる経験につなげていくかが、一つの検討課題になります。一方、Bのお子さんにとっては、母親の付き添いが、学校という場そのものへの不安を和らげるための、いわば支えとして機能している可能性があります。

「母子登校をやめさせる」という同じ対応をとったとしても、Aの場合とBの場合とでは、意味も、子どもへの負荷も、まったく異なります。状態が似て見えることと、問題の構造が同じであることは、別の話だということが、この例からも分かります。

「正しい方法」より「見立て」が重要

不登校、五月雨登校、母子登校、行き渋りといった表面的な状態の名前だけで、対応を決めることはできません。

本人の特性、発達特性、心理的な状態、身体面や医療的な要因、学校の環境、先生との関係、友人関係、学習面、親子関係、家庭内の役割分担、親自身の不安、夫婦や家族間の関係、これまでの経過、そして本人がすでに持っている力や資源。こうした要素を、必要に応じて多角的に見ていく必要があります。

ただし、これは何でも家庭環境や親子関係の問題に還元してよい、という意味ではありません。家庭教育の中で扱える課題と、医療、発達、学校などの専門機関との連携が必要な課題は、分けて考える必要があります。家庭を見ることを大切にする支援者であっても、すべてを家庭の問題として説明しようとすることには、慎重であるべきです。

見立ては、仮説として持ち、実践し、確かめ、直していくもの

臨床心理学の分野には、ケースフォーミュレーション(事例定式化)という考え方があります。目の前の人が抱える問題の背景や、その問題が続いている要因について、これまでの情報をもとに立てる仮説であり、支援の方向性を考えるための土台とされています。

重要なのは、これが最初から確定した答えではなく、あくまで仮説だという点です。研究においても、こうした見立ては、支援を進める中で新しい情報が得られるたびに、見直され、修正されていくべきものだとされています。

これを、家庭への支援の流れに置きかえると、次のようになります。

まず、今分かっている情報から、見立てという仮説を立てる。その見立てをもとに、具体的な関わり方を考える。実際に家庭で試してみる。子ども、親御さん、家庭全体にどんな変化があったかを見る。その結果を踏まえて、見立てをあらためて評価する。必要であれば、見立てそのものや、対応の仕方を修正する。

この循環を続けていくことが、個別の支援には欠かせません。一度立てた見立てを絶対的な正解として扱わないこと自体が、専門性のひとつだと言えます。

不登校支援において、最初に立てた方針を固定せず、経過に応じて見直していくという考え方は、学校における支援についての文部科学省の通知にも見られます。文部科学省は、支援の状況について関係者間で情報を共有するとともに、児童生徒の状況や支援の進捗に応じて、支援内容を定期的に見直すことの必要性を示しています。

一人の視点に頼らないという工夫

どれほど経験を積んだ支援者であっても、これまでの成功体験や、自分の専門領域、最初に立てた見立て、慣れ親しんだ理論に、無意識のうちに引っ張られてしまうことがあります。これは、能力の問題というより、人が物事を見るときに避けにくい傾向のひとつです。

心理職の世界には、ケースについて他の専門家と検討する、ケースカンファレンスやスーパービジョンという仕組みがあります。近年の系統的レビューでは、こうした取り組みが、支援者自身の力量や、支援を受ける側との関係性に対して、一定の良い影響を持つ可能性が報告されている一方、症状そのものの改善効果については、研究によって差があり、まだはっきりしない部分も残っています。それでも、支援者が自分の思い込みや見落としに気づく機会になり得ることは、専門職の間で広く共有されている考え方です。

「本当にこの見立てで合っているのか」「別の可能性はないか」「この対応によって、別の問題を強めていないか」を、一人だけで完結させず、別の視点から確かめること。これは、「複数人で見れば必ず正しくなる」という話ではありませんが、一人の視点だけに頼るリスクを減らす、実践的な工夫のひとつです。

みちびきでは、必要に応じて夫婦2人でケースについて検討しています。一方の支援者が立てた見立てについて、もう一方が別の視点から問い直すことで、一つの見方に固定されるリスクを少しでも減らすためです。

もちろん、二人で検討すれば必ず正しい見立てになるわけではありません。それでも、「担当者がそう思ったから」で支援方針を固定せず、「その見方で合っているだろうか」「見えていない部分はないだろうか」と、別の可能性を検討する機会を意識的に持つことには意味があると考えています。

複数の助言を組み合わせるときに気をつけたいこと

Aという相談先では「待ちましょう」と言われ、Bという相談先では「働きかけましょう」と言われる。SNSでは「好きなことをさせてあげて」と書いてあり、本には「生活習慣を整えましょう」と書いてある。こうした状況の中で、いくつかの助言を、少しずつ同時に取り入れてみる、というご家庭もあります。

セカンドオピニオンを求めることや、複数の相談先を持つこと、医療・教育・心理など複数の専門職が連携することは、決して問題ではありません。それぞれの立場からの情報を得ることには意味があります。

ただ、それぞれの助言が、それぞれ異なる見立てや目的、前提のもとに出されている場合、その背景を整理しないまま、部分的に組み合わせてしまうと、家庭の対応そのものに一貫性がなくなってしまうことがあります。「待つ」ことを重視した方針と、「働きかける」ことを重視した方針を、日によって、あるいは同じ日の中で混ぜてしまうと、子どもにとっては、大人からのメッセージが読み取りにくくなる場合があります。

問題なのは、複数の支援や情報に触れること自体ではなく、それぞれの助言が、なぜ、今のこの子に必要だと考えられているのかを整理しないまま取り入れてしまうことです。

不登校支援を選ぶときに確認したいこと

最後に、実際に支援先を選ぶときに、確認してみるとよい視点を挙げます。

  • 状態の名前(不登校、母子登校、行き渋りなど)だけで、対応を決めていないか。
  • これまでの経過を、丁寧に確認しようとしてくれるか。
  • 「なぜこの対応をするのか」を、家庭が理解できる言葉で説明してくれるか。
  • 子どもや家庭の反応を見ながら、方針を柔軟に見直してくれるか。
  • 自分の専門領域だけでなく、それ以外の可能性についても検討する姿勢があるか。
  • 必要に応じて、学校、医療、発達支援など他の専門機関との連携を考えてくれるか。
  • 一つの成功パターンを、すべての家庭に同じように当てはめようとしていないか。
  • 支援者自身が、自分の専門範囲や限界を認識しているか。

すべてに完璧に当てはまる支援先を探すことよりも、こうした視点で話を聞いてみること自体が、支援を選ぶうえでの手がかりになります。

相談するとき、こんなことを聞いてみてもいい

ホームページやSNSだけでは、実際にどのように家庭を見立て、支援方針を考えているのかまでは分からないこともあります。そんなときは、初回の相談などで、次のようなことを聞いてみるのも一つの方法です。

「この状態の場合、どんなことを確認してから支援方針を考えますか?」
「支援を始めて、想定していた変化が見られなかった場合はどうしますか?」
「家庭での関わり以外に、医療や発達、学校など別の支援が必要だと考えた場合は、どう対応しますか?」

大切なのは、特定の答えが返ってくることではありません。その支援者が、最初から方法を決めているのか、それとも家庭の状況を確認しながら考えようとしているのか。その姿勢を知るための手がかりになります。

みちびきが大切にしていること

みちびきでは、家庭教育、家族療法的な視点、非認知能力、親子関係、家庭全体の構造、本人の特性、学校環境、そして必要に応じた発達・心理・医療の視点から、ご家庭を多角的に見ています。

「みちびきに相談すれば、正しい答えが必ず分かる」とは考えていません。私たちが大切にしているのは、最初から正解を持っていることではなく、ご家庭で実際に起きていることを丁寧に整理し、仮説としての見立てを立て、それを実践しながら、結果を見て、必要であれば見立てや対応を修正し続けていくことです。

必要に応じて夫婦2人でケースを検討するのも、その一環です。一人の視点や一つの成功体験に支援全体が引っ張られるリスクを少しでも減らせるよう、お互いの見立てを問い直し、別の可能性も検討することを大切にしています。

支援の目的は、ご家庭がみちびきに頼り続けることではありません。最終的には、ご家庭自身が、今起きていることを整理し、考え、判断し、対応していけるようになること、私たちはそれを「自走する家庭」と呼んでいます。

まとめ

不登校や母子登校について発信されている情報には、経験者、教員、心理職、発達支援者、医療職、支援団体など、さまざまな立場からのものがあり、それぞれに価値があります。

大切なのは、経験者だから頼りにならない、専門家だから安心、という単純な線引きではありません。その情報や支援が、方法だけを教えるものなのか、それとも、なぜその方法なのかまで、わが子とわが家の状況に沿って説明してくれるものなのかを見ていくことです。

一つの成功体験を、そのままわが子に当てはめる必要はありません。状態の名前が同じでも、その背景にあるものは、家庭によって違います。今、この子とこの家庭に何が起きているのかを、丁寧に見立ててくれる支援を選ぶこと。それが、遠回りに見えて、実は一番確かな道筋になることがあります。

「情報を集めてみたけれど、結局わが家の場合は何を見直せばいいのか分からない」
「いくつか試してきたけれど、今の対応がわが子に合っているのか、一度整理したい」

そんなときは、今ご家庭で起きていることを一緒に整理するところからご相談いただけます。

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Profile

佐藤 博

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)

15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)

家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。

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