9月に不登校が増えると言われるのはなぜ?|夏休み明けに起きやすい変化と家庭で見るポイント
- 2025/09/05
- 2026/08/19
~長期休み明けに潜むサインと対応~
夏休みが終わり、新学期が始まる9月。夏休み明けの9月は、行き渋りや登校への不安が表面化しやすい時期として、教育現場や不登校支援の現場でたびたび語られます。
ただし、「9月になると新たに不登校になる子どもが統計上明確に急増する」と断定できる全国的な月別データがあるわけではありません。
では、なぜ9月は不登校との関係で注意されるのでしょうか。この記事では、公的データと支援現場での経験を分けながら、夏休み明けに子どもたちに起きやすい変化を考えていきます。
9月に「不登校が増える」と言われるのはなぜ?

文部科学省の不登校調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は増加傾向が続いています。令和6年度は小学校137,704人、中学校216,266人、合計353,970人で過去最多となりました。
一方で、この統計は年間の不登校児童生徒数を示したものであり、「9月に何人増えたか」を示す月別統計ではありません。そのため、「9月になると不登校が急増する」と、この数字だけから結論づけることはできません。
それでも夏休み明けが注目されるのは、長期休業を境に登校状況が変化する子どもがいることや、支援現場で休み明けの行き渋りや登校不安が多く見られるためです。
それでも夏休み明けが注目されるのは、長期休業を境に登校状況が変化する子どもがいることや、支援現場でも休み明けに行き渋りや登校不安についての相談が見られるためです。
文部科学省「不登校児童生徒の実態把握に関する調査報告書」(2020年12月)
2020年12月、文部科学省は全国7,161校・22,009人の小学6年生と中学2年生を対象に、不登校児童生徒の実態に関する調査を実施しました。
夏休み以降の登校状況
- 調査に回答した不登校児童生徒のうち、夏休み以降「全く学校に行っていない」「ほとんど学校に行っていない」と答えた割合は、小学生で約35%、中学生で約42%でした。
登校困難の要因(複数回答)
- 小学6年生
- 先生との関係(29.7%)
- 身体の不調(26.5%)
- 生活の乱れ(25.7%)
- 中学2年生
- 身体の不調(32.6%)
- 先生や友人関係など、学校生活に起因する項目が続く
この調査だけで、「夏休み明けをきっかけに不登校が増える」と断定することはできません。
ただ、不登校状態にある子どもの中で、夏休み以降も登校が難しい状態が続いている子が少なくないことは確認できます。
そのため、9月や夏休み明けが不登校の問題と結びつけて語られる背景には、長期休業後に登校の難しさが表面化・継続しやすい子どもが一定数いることも関係していると考えられます。
なぜ夏休み明けは、子どもの負担が大きくなりやすいのか

生活リズムの大きな変化
夏休みの約40日間、子どもたちは学校から離れた自由な生活リズムで過ごします。この期間に形成された生活パターンと学校生活との間には、大きなギャップが生まれてしまいます。
多重なストレス要因
さらに新学期は、以下のような変化や負担が一度に押し寄せるため、学校適応のハードルが一気に高くなります。
- 席替えや友人関係の変化
- 夏休みの宿題提出やテストのプレッシャー
- クラブ活動や学校行事の再開
- 新しい学習内容への対応
こうした要因が重なることで、学校生活への負担感が強まり、行き渋りや心身の不調として表れることがあります。
夏休み中から見ておきたい変化
学校への負担が高まっている子どもの中には、夏休み中から生活や感情、身体の状態に変化が表れることがあります。しかし、これらのサインは「夏休みだから仕方ない」と見過ごされがちです。
見逃されやすい重要なサイン
生活リズムの乱れ
- 昼夜逆転や朝起きられない状態が続く
- 食事時間が不規則になる
学校への拒否反応
- 学校の話題を避ける、反応が薄くなる
- 友達の名前が会話に出なくなる
社会的な引きこもり
- 外出が極端に減る、家にこもりがち
- 友達との約束を避けるようになる
情緒の不安定
- 感情が不安定(怒りやすい、泣きやすい)
- 些細なことでイライラする
身体症状の出現
- 理由のはっきりしない頭痛、腹痛、吐き気
- 食欲不振や過食
親への過度の依存
- 一人で過ごせない、常に一緒にいたがる
- 親から離れることを極端に嫌がる
ただし、これらの変化があるからといって、必ず学校への不安や不登校につながるわけではありません。大切なのは、一つのサインだけで判断せず、1学期までの様子や、学校の話題への反応、身体症状などを合わせて見ていくことです。
学年別の傾向にも要注意

文部科学省の統計では、学年が上がるにつれて不登校児童生徒数が増える傾向が見られます。
背景は一様ではありませんが、高学年から中学生にかけては、学習内容の変化、人間関係、思春期の心身の変化、進学など、子どもを取り巻く環境も大きく変わります。
特に中学1年生は環境の変化が大きいため、より注意深い観察が必要です。
夏休み明けに家庭で見ておきたいこと
夏休み後半からできる対応のポイントは、小さく・具体的に実践することです。
① 家庭での変化をすぐに「怠け」と決めつけない

長期休みを経て新学期が始まると、生活リズムや学校生活への切り替えだけでも、子どもにとっては少なからず負荷がかかります。親の目には普段通りに見えていても、学校で気を張って過ごしていることで、家庭ではダラダラしたり、甘えが増えたり、以前できていたことをしなくなったりすることもあります。
だからといって、そうした姿をすぐに「怠け」「だらしなさ」と判断する必要はありません。一方で、すべてを「学校で頑張っている反動」と考えるのも注意が必要です。
睡眠不足や生活リズムの乱れ、学校での負荷、友人関係、発達特性、家庭での関わり、本人の自立度など、今の状態に何が影響しているのかを見ていくことが大切です。
② 子どもからのSOSを逃さない

子どもは自分からふとした瞬間に、学校での困りごとや不安を口にすることがあります。そうした子ども発信の小さなSOSを逃さないように、耳を傾ける姿勢が重要です。
その際、まずは、何に困っているのかを一緒に整理します。本人が考えられる部分まで親が先回りして答えを出す必要はありませんが、本人だけでは整理できない状態なら、一緒に考えることも必要です。大切なのは、「全部親が決める」「全部本人に任せる」の二択にしないことです。
③ 自己決定力を育てて自信をつけさせる

「これしなさい」「あれした方がいいよ」と親が先回りして決める場面が多くなると、子ども自身が考えたり、選んだりする機会が少なくなることがあります。
学校生活では、自分で判断して動く場面も多いため、日常の中で年齢や状態に応じた選択や決断の機会を持つことは大切です。
ただし、何でも本人に任せればよいわけではありません。今どこまでなら自分で考えられるのかを見ながら、必要な部分は支え、できる部分は本人に返していきます。
こうした経験は、「自分で考えて決められた」という感覚を積み重ねる機会になります。「これしなさい」「あれした方がいいよ」と親が先回りして指示や提案を繰り返すと、子どもは考える前に答えを求める習慣がつき、自分で決めることに不安を感じるようになります。
しかし学校生活では、自分で判断して行動する力が求められます。そのため、日常の中で子ども自身に選択や決断をさせる機会を少しずつ増やすことが大切です。
自己決定の経験を積むことで「自分で選んだ」「自分でできた」という感覚が芽生え、子どもは自分の判断に自信を持てるようになります。その自信が、不安の軽減にもつながっていきます。
兆候に気づいたら“早めの対応”が重要
行き渋りや身体症状、生活の大きな変化などが続いている場合、「完全に学校へ行けなくなるまで待つ」必要はありません。早い段階で状況を整理することで、家庭・学校・必要に応じて医療や専門機関が、それぞれ何を担うのかを考えやすくなります。
早い段階で整理する意味
早い段階で相談する意味は、「早く相談すれば早く学校へ戻れる」ということではありません。
子どもが何に困っているのか、家庭で何が起きているのか、学校と何を共有する必要があるのか、医療や専門機関の視点が必要なのかを、状態が複雑になる前から整理しやすくなることにあります。
また、親御さん自身が毎朝の判断を一人で抱え続けずに済むという意味でも、第三者の視点を入れることには価値があります。
相談先の選択肢
もし兆候に気づいたら、以下のような相談先があります:
- 学校のスクールカウンセラー
- 市区町村の教育相談センター
- 児童相談所
- 不登校支援専門機関
- 小児科や児童精神科
- 民間機関
まとめ:大切なのは「9月だから」ではなく、この子の現在地を見ること
夏休み明けは、生活リズムや学校生活への切り替え、友人関係、学習、行事など、さまざまな負荷が重なる時期です。
ただし、「9月だから不登校になる」わけでも、「このサインがあれば不登校になる」と決められるわけでもありません。
大切なのは、1学期までどう過ごしていたのか、夏休み中にどんな変化があったのか、身体や生活リズムはどうか、学校の何に負担を感じているのか、そして今どこまでなら本人が自分で動けそうなのかを見ていくことです。
そして、「学校へ行かせるか、休ませるか」だけで考えないこと。
子どもの状態によっては休息が必要なこともあります。一方で、親がすべてを代わりに決めたり、できることまで支え続けたりすることで、本人が自分で考え、動く機会が少なくなることもあります。
必要なのは、登校だけを見ることではなく、その子が今どこで困っていて、家庭・学校・本人に何が必要なのかを整理することです。
みちびきでは、不登校や行き渋りを「学校に行ける・行けない」だけで判断せず、子どもの状態、家庭での関わり、親子関係、本人の自立度、発達特性、学校環境などを整理しながら、次の一歩を一緒に考えています。
プロフィール

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)
15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)
家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。











