【母子登校・小学1年生】年長1月からの行き渋りが一人登校につながるまで|家庭教育で不登校を防いだ復学事例
- 2025/11/18
- 2025/11/18

母子登校は「甘え」ではなく、育ち途中のサイン
「ママがいないと学校に行けない」「教室に入ると泣き続けてしまう」――。
母子登校や不登校が続くと、子ども本人もしんどく、親御さんも「このままで大丈夫なのか」と不安でいっぱいになります。
今回は、年長の1月から激しい行き渋りが始まり、小学1年生では母子登校になった男の子が、小学1年生の3学期には一人で元気に登校できるようになったケースをご紹介します。
ひとつのご家庭の事例ではありますが、
● どのような経緯で母子登校になっていったのか
● どんな家庭教育・親の関わり方の見直しがあったのか
● 子どもの「非認知能力」がどう育っていったのか
を整理しながら、同じように悩んでいる親御さんへのヒントにつなげていきたいと思います。
※実際のご家庭のケースをもとにしていますが、個人が特定されないよう複数のケースを混ぜながら作成しています。
ケースの概要(プロフィール)
対象:小学1年生 男の子
経過:
- 年長1月頃から、幼稚園での激しい行き渋りが始まる
- 卒園まではなんとか通うものの、小学校入学と同時に母子登校へ
- お母さんが教室前や廊下に付き添い、トイレにも一人で行けない状態が続く
- メッセージカウンセリングと電話カウンセリングによる支援を10か月継続
- 小学1年生の3学期には、一人で玄関から登校できるようになる
年長1月から始まった激しい行き渋り
きっかけは、年長の1月、卒園を間近に控えた頃でした。幼稚園での些細な出来事をきっかけに、息子さんは園で泣くようになり、なかなか涙が止まらない日が増えていきました。
最初、お母さんは「一時的なものだろう」と様子を見ていました。しかし徐々に、
● 朝から大泣きして暴れる
● 車から降りられない
● 幼稚園バスの乗車を拒否する
といった状態になり、ご夫婦ともに心身ともに疲弊していきました。
「今振り返ると、あの頃の日記を読み返すだけで胸が苦しくなる」とお母さんはおっしゃっていました。
親が気づいた「過干渉」と、子どもの苦手さ
小学校入学を数ヶ月後に控え、不安を感じたご両親は、私たちが以前所属していた支援機関に相談されました。当時はまだ未就学児であり、引っ越しも控えていたことから、
● まずはブログ記事や書籍などで家庭教育の考え方を学び
● 家庭で親の関わり方を見直していく
という形からスタートしていたそうです。
そこでお母さんが気づいたのは、
🔵 新しい環境に弱い
🔵 失敗を極端に怖がる
🔵 「苦手なこと」を避けて通ってきた
という息子さんの特性と、それを“先回り対応”でカバーしてきた自分たちの過干渉でした。
習い事も、家でしっかり練習させてからでないとさせない。苦手そうなことは、失敗させないように先回りして避けさせてしまう。
「つまずかせないように」という親心からの関わりでしたが、結果として、
● 失敗しても大丈夫
● 嫌な気持ちを抱えながらもやり切る
といった非認知能力(自分を高める力・ストレスへの耐性)が育ちにくい環境になっていたとも言えます。
卒園式で見えた「一人で行こうとする力」
家庭での関わり方を少しずつ変えていく中で、息子さんの行動にも変化が出始めました。
とはいえ、登園しぶり自体は卒園式当日まで続きます。ご夫婦は「最悪、卒園式に出られないかもしれない」と覚悟して会場に向かったそうです。
ところが当日、息子さんは突然こんな言葉を口にします。
「今日ぐらい泣かないで、一人で行く」
その言葉の通り、一人で教室に向かっていった姿は、お母さんにとって今でも忘れられない光景だそうです。
ここには、
● 自分と向き合う力(気持ちを言葉にする)
● 自分を高める力(不安があっても一歩を踏み出す)
という非認知能力の芽生えが見て取れます。
「これなら小学校も大丈夫かもしれない」――ご夫婦は淡い期待を抱きました。
小学校入学と同時に始まった母子登校
しかし、本当の困難はここからでした。
小学校の入学式当日。会場に着いた途端、息子さんは大号泣し、お母さんから離れられませんでした。他の新一年生が一人で体育館に入場していく中、お母さんは息子さんと一緒に泣きながら歩き、式の間もずっと隣の席に座ったまま。
「周りの視線が痛く、消えてしまいたい気持ちでいっぱいでした」
とお母さんはその時を振り返っておっしゃっていました。
入学式の翌日から、完全な母子登校が始まりました。
● 息子さんは一人で教室に入れない
● お母さんは常に廊下で待機
● 授業中も、休み時間も、トイレに行く時でさえ離れられない
「私がいることで授業が受けられるなら」と覚悟して始めた母子登校でしたが、
「みんなの目がこわい」
「なんでお母さんは隣にいてくれないの?」
と教室で叫び、給食も食べられず、一日中泣いて過ごすこともあったと言います。
お母さんは、
- 子どもを学校に連れていく責任感
- 周囲の目線への恥ずかしさ・申し訳なさ
- どうしてあげればいいかわからない不安
で、心身ともに限界に近づいていました。
そうした中で、改めて私たちの支援機関「みちびき」にご相談くださいました。
スタンダードコース(メッセージカウンセリングと電話カウンセリング)による支援を10か月継続
この頃から、支援は本格的に始まりました。
● 毎日「親子会話」を書く
● みちびきの担当家庭教育コーディネーターからの添削で、親の声かけ・対応を日々調整する
● 週1回の電話カウンセリングでは、その週の様子・親の気持ちの整理・次の一歩(行動計画)を一緒に考えていきました
お母さんは、泣きながら電話されることも多く、「分かっていても、なかなか変えられない自分」にもどかしさを感じていました。
それでも、
「すぐに結果は出なくて当たり前」
「親子ともに”練習中”なんだ」
という前提を共有しながら、“親ができる具体的な一歩”を積み重ねていく期間が続きました。
支援のポイント:育てたかった3つの非認知能力
このケースで特に意識したのは、みちびきが大事にしている3つの非認知能力です。
1. 自分と向き合う力
● 「怖い」「不安」「恥ずかしい」といった感情を言葉にできる
● 泣く・暴れる以外の伝え方を増やしていく
2. 自分を高める力
● 嫌でも「今日のゴール」を決めてやり切る練習
● 小さな成功体験を積み、「できた自分」を実感する
3. 他者とつながる力
● 親以外の大人(先生)との信頼関係
● 友だちとの距離感を、少しずつ取り戻す
そのために、「一気に母子登校をやめる」のではなく、「登校の動線」を細かく分けて、段階的に”離れる練習”をする方針を取っていきました。
「一緒に行く距離」を少しずつ手放す計画
ある電話カウンセリングのあと、お母さんは息子さんと話し合いながら、こんな計画を立てました。
- 1週目: 学校の教室前まで一緒に行く
- 2週目: 校門まで一緒に行き、そこから一人で教室へ
- 3週目: 家の近くの角まで一緒に行き、そこから一人で登校 … など
実行すると決めた日、息子さんの方からも「今度こそ一人で行ってみる」という前向きな言葉が出てきたそうです。
お母さんは、息子さんの気持ちを受け止めつつも、「もしうまくいかなかった時の対応」を頭の中で準備しながら送り出しました。
すると、翌日から息子さんは計画通りに一歩ずつ進めていきます。
● 週ごとに、お母さんが付き添う距離を短くする
● 三週目には「今日は一人で行けそう」と自分から言い、家の玄関から一人で登校していった
● 元気に「ただいま」と帰ってきたとき、お母さんは「うれしさより驚きが勝った」と振り返っています
ここで大事なのは、「一人で行けたこと」以上に、「一緒に計画を立て、子ども自身が決めたゴールを達成した経験」です。
これは、
● 自分で決める力(自己決定感)
● できたことを自分で感じる力(自己効力感)
を底上げする、非常に大きな一歩になりました。
その後の登校と、親子の変化
その後、息子さんは小学1年生の3学期を迎える頃には、ほぼ毎日一人で元気に登校できるようになりました。
もちろん、途中で登校が不安定になる時期もありました。それでも以前のように一気に崩れることはなく、
「今日はここまでなら頑張れそう」
「明日はこうしてみる」
と、自分で持ち直せる回復力が育っていました。
今では、妹さん(新1年生)の登校を心配し、「大丈夫かな」と声をかけてあげられる存在になったそうです。
お母さん自身も、
● 「すぐに答えを出そうとしない」
● 「子どもが自分で決める時間を待つ」
● 「うまくいかない日も”練習の一部”と捉える」
という親としての”待つ力”と”任せる力”が育ったことを感じておられました。
「再び母子登校になるかもしれない不安はゼロではありません。それでも、子どもだけでなく親も一緒に成長していると自分に言い聞かせて、これからも頑張っていきます。」
という言葉で、お手紙は結ばれています。
支援者としての振り返り:このケースのポイント
このケースを振り返ると、ポイントは次の3つでした。
1. 「母子登校=悪いもの」と切り捨てなかったこと
いきなり「一人で行かせる」方向へ舵を切るのではなく、まずは「今は、親の同席が”安心の土台”になっている時期」と捉えたこと。
2. 親の過干渉に「ダメ出し」をするのではなく、「選び直し」を一緒にしたこと
先回りして守ってきた背景には、子どもへの愛情と不安があります。そこを責めるのではなく、「ここからどう変えていくか」を具体的な行動に落としていきました。
3. 非認知能力に着目し、“できる/できない”ではなく“育ち途中”として見たこと
離れる力・切り替える力・自分の気持ちを伝える力は、トレーニングで育つ要素です。一人で登校できたことはゴールではなく、その過程で育った力こそが、今後の揺れを支える土台になります。
同じように母子登校・行き渋りで悩む親御さんへ
ここまで読んで、
「うちの子も、似ているかもしれない」
「ここまでひどくないけれど、この先が不安」
と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
母子登校や不登校は、「親が甘やかしたから」でも「子どもが弱いから」でもありません。
🔵 子どもの気質や経験
🔵 親の不安やこれまでの関わり方
🔵 学校環境や人間関係
いくつもの要素が重なって、今の状態が形作られています。
だからこそ、
🔴 親子だけで抱え込まず
🔴 事実を整理し
🔴 家庭でできる”一歩”から一緒に考えていくこと
が大切になります。
みちびきからのご案内
みちびきでは、
● 毎日のメッセージカウンセリングや会話記録をもとにした「家庭教育コンサルティング」
● 不登校・母子登校・行き渋りに特化した「家族療法×非認知能力」の支援
を行っています。
「どう進めたらいいのか分からない」
「この対応で合っているのか不安」
という段階からご相談いただけますので、今回のケースと少しでも重なる部分があれば、まずはお気持ちからお聞かせください。
プロフィール

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)
15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)
家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。











