学校に行けない。
親が「冷静でいられない」と親子関係はこじれる?研究が示す“感情の悪循環”と、ルール運用で抜け出す方法
- 2026/01/30
- 2026/01/30

「子どもの様子を見るたび、不安で胸が苦しくなる」
「今日こそ冷静に、と思っても、つい強い口調になってしまう」
「ルールを守らせたいのに、例外ばかり増えていく」
もしあなたがこんな状況にいるなら、それは「親として失格」なのではありません。むしろ、子どものことを真剣に考えているからこそ起きている——リソース(有限な資源)が削れている状態です。
睡眠時間、心の余裕、相談できる相手、時間、責任感。これらが限界まで削られると、どんなに優れた親でも冷静さを保つのは難しくなります。
今日の記事では、次の3つを整理します:
1. 悪循環の正体
2. 崩れやすい兆候
3. 整える順番
親子関係がこじれるとき、起きているのは「どちらかのせい」ではなく悪循環
親子関係がこじれるとき、原因は一つではありません。親の不安、子どもの不安、学校の出来事、家庭の余裕——それらが重なって連鎖します。
研究でも、親のストレスや感情の揺れと、子どもの反応(不安定さ・反発・回避など)が影響し合い、悪循環になりやすいことが指摘されています。(複数の研究で、親のストレスや感情の揺れが大きいほど、親子の衝突や反応的な関わりが増えやすい“関連”が報告されています。)
だから「親のせい」と言い切りたいわけではありません。けれど、親の揺れが大きい状態が続くほど、関係がこじれやすいという関連が報告されているのも事実です。
注目したいのは犯人探しではなく、悪循環の輪の中で「変えられるポイント」がどこにあるかです。
親は子どもの感情を冷やす「ラジエーター(冷却装置)」になっている
子どもが不安や怒りで感情が高ぶったとき、親は自然とそれを受け止め、冷やす役割を担います。これは悪いことではありません。
けれど、ラジエーターは壊れているのではなく熱が入りすぎると処理しきれなくなる——そういう構造です。
親自身が不安でいっぱいのとき、子どもの感情をさらに受け止めようとすると、オーバーヒートします。
行動の裏にある「心の気持ち」を想像する力
「今の反発は、怒り?不安?恥ずかしさ?それとも疲れ?」
子どもの行動の裏にある感情を読み取る余白がなくなると、衝突が増えます。そして、その余白を奪うのが「親自身の感情の波」です。
そして、子どもは自分の気持ちを正確に言葉で表現するということはまだ未熟です。そこを親がしっかり理解して、その理解の手助けを一緒にしてあげられると子どもが自分自身を理解する流れにつながるでしょう。
なぜ起きる?親子がハマりやすい“悪循環”のメカニズム
悪循環には、いくつかのパターンがあります。ここでは代表的な4つのループを見ていきましょう。
ループ①「感情の波」→「反応」→「さらに波」
- 子どもの言動(「学校行きたくない」「宿題やりたくない」)
- 親の不安・焦り上昇
- 強い言い方/説得/正論(「なんでできないの?」「このままじゃダメでしょ」)
- 子の反発 or 萎縮
- 親の不安がさらに増す
ポイント: 正論が悪いのではありません。「熱い状態」で正論を出すと、火に油になりやすいのです。子どもが聴く姿勢にあるのか判断しながら話したいところです。
ループ②「ルールの揺れ」→「逸脱」→「関係の摩耗」
- その場しのぎの例外運用(「今日だけ特別」が何度も続く)
- 「守らなくても何とかなる」が学習される
- 親の立場が下がるというより、運用の予測可能性が下がり、安心が減る
ルールが揺れると、子どもは“次に何が起きるか”が読めず、不安が増えることがあります。だからこそ、内容より運用(予測可能性)が大切です。
また、ルールが簡単に変わることが日常化してしまうと、子ども側の認識としてもルールに対する捉え方が軽くなってしまいます。
ループ③「自己否定」→「過介入/放任」→「不安定」
- 罪悪感・焦りが強いほど、親は極端になりやすい
- 「もっと関わらなきゃ」と過介入になるか、「もう疲れた」と放任になる
- その極端さが、子の不安定さを増やすことがある
精神的に不安定な状態が続くと、親であっても対応がブレることがあります。そういう状態が多いご家庭で育った子どもは感情によって対応を変えてよいという学習をすることもあります。
子どもは、親の言葉や態度から“世界の安全度”を学びます。だからこそ、完璧ではなくても、戻れる運用(再起動)が大切です。
ループ④「境界線の崩れ」:子どもの問題が、親の問題にすり替わるとき
ここで言う「境界線(バウンダリー)」は、突き放す線ではありません。
親子それぞれの役割と責任を分けて、安心して関われる状態を守る線です。
境界線が崩れると、親の頭の中でこんな“緊急モード”が起きやすくなります。
「このままだと取り返しがつかない」
「私が何とかしなきゃ」
「私の育て方のせいかも」
そして、子どもの問題(子どもが向き合う課題)が、親の問題(親が背負う責任)にすり替わることがあります。
具体例:不登校の場面
境界線が保たれているとき
子ども
親御さん
行けないほどしんどいのね。今日どうするかはあなたが決めることよ。
私は、安心して過ごせるようにサポートするわ。
この関わり方は、親が“放置”しているわけではなく、
「選ぶのは子ども」「環境を整えるのは親」と役割を分けています。
境界線が崩れたとき
親御さん
あなたが行けないのは私のせいかもしれない。私が何とかしなきゃ。
→説得・説明・交渉が増え、家庭がずっと緊張モードになる
こうなると、起きやすいのがこの2つです。
- ルールが守れなくなる:子の課題なのに、親が全責任を負う前提になり、例外運用が増える
- 話し合いが感情戦になる:「子どもの問題=親の失敗」になって、冷静に距離が取れない
境界線を戻すときは、次の型が効きます。
「気持ちは受け止める」+「責任は子どもに戻す」+「親ができるサポートを言う」
例:「しんどいよね。今日どうするかはあなたが決めていい。私は安全と生活リズムを整えるよ」
境界線は冷たさではなく、親子の安心を守る“柵”です。
現場でよく見るサイン|「冷静さが奪われている家庭」に出やすい兆候
次のような状況が重なると、親子の中で悪循環が回りやすくなります。
- 子どもの一言で方針が日替わり(昨日は「休ませる」、今日は「絶対行かせる」)
- ルールの例外が積み上がっている(「今回だけ」が常態化)
- 親が“説明し続ける”“わからせ続ける”状態(同じ話を何度もしている)
- 相談や確認が増え、判断が「緊急モード」になっていく
- 夫婦で方針が割れている(片方は厳しく、片方は甘く)
ここまでは、どの家庭にも起こり得る「一般的な流れ」です。
ただ、支援の現場で長く関わっていると、もう一つ、特徴的なサインが見えてきます。
支援者として感じる“もう一つのサイン”
私たちが支援をしていて強く感じるのは、親が冷静さを失いやすい時期ほど、相談の仕方にも“崩れ”が出やすいということです。
たとえば、事前に「相談は週○回」と決めていたとしても、次のような形で“逸脱”が増えていきます。
- 「今すぐ返事がほしい」が増える(時間帯や頻度が守れない)
- 相談が「状況整理」ではなく「不安の放出」になり、話が着地しない
- 「ルールを変えるべきかどうか」を、子どものその日の気分で決めたくなる
- 本来は家庭で決めるべきことが、毎回“外部判断”になっていく
ここで大事なのは、親がわがままだから起きる、という話ではないということです。
多くの場合、親の中で「危機感」が強まり、頭が“緊急対応モード”になっているだけです。
緊急モードでは、人はこうなりやすいです。
- 長期の方針より「今日を乗り切る」判断になる
- 例外を作ってしまい、運用が崩れる
- 不安が強いほど、即時の安心(すぐの返信・すぐの答え)を求めやすい
結果として、家庭のルールも、支援のルールも、両方が揺れやすくなります。
関係を壊さないために|冷静さは“性格”ではなく「整えられる」
ここで大切なのは、冷静さは性格の問題ではないということです。
冷静さは有限の資源——睡眠・時間・孤立・責任感で削れていきます。そして、整える順番があります。
整える順番:①波を下げる → ②運用を固定
いきなり完璧を目指すのではなく、一つずつ積み上げていきましょう。
① まず“波を下げる”(30秒〜5分)
感情の波が高いときは、どんな正論も届きません。まずは波を下げることに集中します。
- 深呼吸を3回する
- 水を飲む
- 一旦その場を離れる(「ちょっとトイレ行ってくる」でOK)
言い換えテンプレートも効果的です。
- 「そう感じたんだね」
- 「今は答えを出さずに聞くね」
- 「落ち着いてから、一緒に決めよう」
この瞬間の目的は、全部やろうとしないこと。
“安全の確保だけ”に絞る日があってもいいんです。
② ルールは「内容」より「運用」が9割
ルールが機能しなくなるのは、内容が悪いからではなく、運用が揺れるからです。
- 例外を作る条件を先に決める(体調不良/テスト前など)
- 破った時はペナルティより「淡々とした手順」を決める
- 破った事実を確認
- 次にどうするか決める
- 感情ではなく手順で実行
親が揺れている日は、再起動していい。
「今日は冷静に判断できないから、この話は明日の朝に回そう」
これも運用です。
それでも揺れる日はある|揺れた後に関係を修復する一言
どんなに整えても、揺れる日はあります。そのとき大切なのはリカバリーです。
例:「さっきは焦って強く言ってしまった。あなたを大事に思うから不安だった。ごめんね」
謝ることは、親の立場が下がることではありません。
境界線(ルール)は保ちつつ、感情の部分を修復する。これが関係を長く安定させます。
まとめ|冷静さは土台。悪循環は「運用」でほどける
親子関係がこじれるとき、起きているのは「誰かのせい」ではなく、
不安と反応が連鎖する “悪循環” です。
そして研究でも、親のストレスや感情の揺れが大きい状態が続くほど、親子の衝突や反応的な関わりが増えやすい“関連”が報告されています。
ただし、希望も同じくらいはっきりしています。
悪循環は、正論でねじ伏せるのではなく、運用でほどけます。
この記事の要点は、この順番です。
- ①波を下げる:反応する前に間を取る(深呼吸/水/一旦離席)
- ②運用を固定する:例外条件と「破った時の手順」を先に決める
- ③相談の使い方を整える:感情だけで終わらず「次の一手」につながる形にする
冷静さは性格ではなく、有限の資源です。
資源が削れているときに揺れるのは、弱さではなく“自然な反応”です。
だからこそ、責めるより先に、家庭が回る仕組みを一つずつ整えていきましょう。
同じ状況で悩む方へ
家庭ごとの“悪循環の形”を一緒に見立てし、①感情の波を下げる方法 ②守れるルール運用 まで、あなたの家庭仕様に設計します。
子育てをしていると「冷静になれない」と感じることは多々あるでしょう。そう感じる大きな理由の一つは、相手(子ども)を自分の思うとおりに動かそうという企みがあることが実は多いです。企みと書くと大袈裟に見えるかもしれませんが、本当の意味で「どうにかしたい」とお考えの方は、そう考えてしまっているという事実を受け止めて行動する必要が出てきます。
支援者として申し上げたいのは、親御さんが「冷静になれない」と感じる場面が日常生活で多発しているような環境では、親子共に精神的にもいい環境とは言えないということです。
それぞれのご家庭に合った環境整備はできますので、一人で抱え込まず、専門家と一緒に、あなたの家庭に合った方法を見つけていきましょう。
プロフィール

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)
15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)
家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。











