発達検査は“安心のラベル”か、“子どもを守る地図”か ― 受ける前に親が知っておきたいこと
- 2026/02/13
- 2026/02/10

「学校から発達検査を勧められた」「不登校が続き、原因を知りたい」「うちの子は大丈夫なのか確認したい」——。
発達検査を受けるきっかけはさまざまですが、そこに共通しているのは“親の不安”です。
しかし発達検査は、子どもを評価するテストではなく、本来は“子どもを理解し、守るための地図”です。
この第1回では、発達検査の基本を押さえつつ、「受ける前に親が自分に問うべきこと」を整理します。
発達検査とは何か
発達検査で「分かること」
発達検査で分かるのは、主に以下の3点です。
ただし、これらは「今の状態」を示すものであり、将来や可能性を固定するものではありません。
言語理解、視覚処理、記憶、処理速度など、能力のバランスが見えます。「全体的に苦手」ではなく、「〇〇は得意だが△△が苦手」という凸凹が分かります。
同年齢の子どもと比べて、どの程度の位置にいるかが数値で示されます。ただし、これは優劣ではなく、あくまで現在地の確認です。
どんな伝え方が伝わりやすいか、どんな環境が本人にとって負担が少ないかを考える材料になります。
ポイント:発達検査は診断をつけるためだけのものではなく、“理解のための道具”です。
発達検査で「分からないこと」
発達検査ってこんなことですよと丁寧におしえていただけるサイトは、すでに多く存在しています。ここでは、あえて「分からないこと」を明記したいと思います。
発達検査では、次のことは分かりません。
🔵 子どもの幸せ
🔵 将来の成功・失敗
🔵 親の価値
🔵 家庭の温かさ
発達検査は子どもの“能力の一側面”を測るものであり、人格や将来を決めるものではありません。
子どもの価値は、点数では測れません。
なぜ親は発達検査を受けようとするのか
発達検査を受ける動機は家庭によってさまざまです。ここでは代表的なパターンを整理します。
よくある動機① 学校から勧められたから
「担任から勧められて受けた」という家庭は決して少なくありません。
親はそこまで困っていなくても、学校主導で始まることが多いのが実情です。学校側は子どものつまずきの背景を客観的に知りたい、あるいは通級・支援級・合理的配慮の検討材料として使いたいと考えています。
実際、支援の現場でも学校側から言われて受けたというご家庭は案外多いなと感じました。
この場合、親自身が「本当に必要か」を判断する前に、流れで受けてしまうケースもあります。
そのため、「受ける・受けない」の最終判断は親がしてよい、ということを知っておくことが大切です。
よくある動機② “うちの子は普通か”を確認したい
これは最も多い動機の一つです。
周囲と比べる不安、自分の子育てへの不安、そして何より「大丈夫」と言ってほしい気持ちが背景にあります。
多くの親は、診断名そのものというよりも、「大丈夫だよ」と言われたい安心を求めて検査を選びます。
「検査で問題なければ安心できる」「何か見つかれば対処できる」という期待を持ちやすいのですが、実際には検査結果だけで安心が得られるわけではありません。
よくある動機③ 学校での困りごとの理由を知りたい
具体的には、次のような困りごとがあるときです。
● 宿題が進まない
● 板書が追いつかない
● 行き渋りがある
● 友達とのトラブルが多い
● 忘れ物が多い
「怠けではないと知りたい」「本人のせいではないと確認したい」という気持ちが背景にあることが多いでしょう。
検査で特性が分かれば、叱る必要がなくなる、周囲に説明できる、と考える親御さんは多いです。
よくある動機④ 配慮を得るための“根拠”が欲しい
学校に配慮を求めるとき、「検査結果」があると話が進みやすいと感じる親御さんは多いです。
具体的な配慮の例
- 通級を使いたい
- 宿題を減らしたい
- 別室対応をしてほしい
- 板書の写真撮影を許可してほしい
重要な点:ただし、検査結果がなくても配慮は可能な場合があります。学校によっては、保護者の申し出や医師の意見書で対応してくれることもあります。
よくある動機⑤ 通級・支援級につなげたい
診断名そのものが目的ではなく、「子どもに合った場」を探したい親が多いです。
通常級では刺激が多すぎる、ついていけない、孤立しやすいなどの理由で、少人数や個別対応のある環境を望むケースです。
この場合、検査は「子どもに必要な支援を受けるための入り口」として位置づけられます。
よくある動機⑥ 診断名が欲しい
一定数の親御さんは、診断名そのものを求めています。
診断名を求める理由としては・・・
● 診断名があると安心できる
● 周囲(学校・親族・ママ友など)に説明しやすい
● 情報収集がしやすい(書籍・SNS・支援団体など)
などが挙げられます。
しかし注意点:診断名がついても、日々の困りごとは自動的に解決しません。診断名は“理解のラベル”であって、“解決策”そのものではありません。
よくある動機⑦ 不登校・行き渋りの“理由探し”
不登校や行き渋りが続くと、「発達特性が原因かもしれない」と考えて検査を受ける家庭があります。
とくにWISC(ウィスク)を勧められることが多いのが実情です。
強調しておきたいポイント
- 不登校=発達特性とは限らない
- 心理的ストレス(いじめ・人間関係・評価不安など)や環境要因の影響が大きい場合も多い
- 発達特性があっても、それが直接の原因ではないケースもある
不登校の背景は複合的であり、検査だけで全てが分かるわけではありません。
例えば、長期間緊張して学校に通っていた子どもが、休み始めた直後に検査を受けると、集中力や処理速度が低めに出やすいことがあります。
発達検査を受ける前に、親が自分に問う3つの質問
検査を受ける前に、まず親自身が整理しておくべき問いがあります。
「発達検査を受けた方がいいのかしら?」と迷う親御さんは少なくありません。そう思うことは子を持つ親として当然だとも言えます。この問いを見ていただきながら、受ける・受けないを決める手助けとなればと思います。
質問① 私は何を知りたいのか?
検査を受ける目的を明確にします。
🔴 安心が欲しいのか?(「大丈夫」と言ってほしい)
🔴 学校の配慮を得たいのか?(通級・別室・宿題調整など)
🔴 子ども理解を深めたいのか?(得意・苦手を知り、関わり方を変えたい)
目的が曖昧なまま受けると、結果を受け取ったときに「で、どうすればいいの?」となりやすいです。
質問② 結果をどう使うつもりか?
検査結果が出たとき、それをどう活かすかを考えます。
🔴 子どもを責めないか?(「やっぱりできないんだ」と決めつけない)
🔴 環境を変える材料にできるか?(家庭や学校の関わり方を調整する)
🔴 子どもに伝えるか、伝えないか?(伝えるならどのタイミングで、どんな言葉で?)
結果を「子どものダメ出し」にするのではなく、「環境を整えるためのヒント」として使えるかが重要です。
質問③ 検査を受けるタイミングは今で良いか?
検査は子どもの状態が安定しているときに受けるのが理想です。
避けたいタイミング
🔴 不登校が始まったばかりで、子どもが不安定なとき
🔴 学校でのトラブル直後
🔴 家庭内で大きな変化があったとき(転居・離婚・家族の病気など)
子どもがしんどい時期に受けると、本来の力が発揮できず、結果が正確でないこともあります。
必要であれば、状態が落ち着いてから再検査するという選択もあります。
発達検査は“子どもを測る道具”、家庭は“子どもを育てる場”
発達検査は、子どもの能力の一側面を数値化する道具です。
しかし、子どもが育つのは、安心できる家庭や学校の中です。
検査の点数が高くても低くても、子どもが安心して過ごせる環境があるかどうかが、何よりも大切です。
数字だけで子どもを判断しないこと。それが、検査を受ける前に親が心に留めておきたいことです。
次回予告
次回は「代表的な発達検査(WISC・田中ビネー・K式・WPPSI)の違い」を整理し、どんな親にどの検査が向くのかを考えます。
検査の種類によって、分かることや所要時間、費用も異なります。次回もぜひご覧ください。
プロフィール

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)
15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)
家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。











