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病院通いを”成長の場”に変える:家庭教育×非認知能力で見る、子どもが「自分で話す力」を育てる練習のチャンス

  • 2025/11/21
  • 2025/11/06

「また今日も病院か…」

通院が続く日々の中で、そんなため息をつくこともあるかもしれません。待合室での長い待ち時間、緊張した診察室、帰り道の疲れた表情。

けれど、この”当たり前の時間”を「ただ過ごす時間」にしてしまうのは、少しもったいないことです。

病院という場所は、実は子どもの「考える力」「感じる力」「伝える力」を育てる絶好の”練習の場”。そして、親の関わり方次第で、家庭教育としての質が大きく変わっていきます。

目次

    なぜ”病院通い”が子どもの非認知能力を育てるチャンスになるのか

    通院・検査・治療という場面は、子どもにとって予測できないことが多く、不安や緊張がつきものです。しかし、こうした「いつもと違う環境」での小さな挑戦こそが、非認知能力(やり抜く力・自己調整力・共感力)を育てる機会になります。

    診察室という空間には、独特の緊張感があります。白衣を着た医師、聞き慣れない医療用語、自分の体について説明しなければならないプレッシャー。

    けれど、この緊張感のある環境だからこそ、子どもは「自分の言葉で伝える」という大切なスキルを練習できるのです。

    「親がすべて答える」から「子どもに任せる」へ:診察室に見られる過干渉

    支援現場でも、日常でもよく見かける光景があります。それは——医師の質問に、子どもが答えられるにも関わらず、先に親がすべて応対してしまう場面です。

    たとえば、こんなやり取り:

    医師: 「どこが痛いの?」
    子ども: (考えようとしている)
    親: 「昨日からずっとお腹です。夜も痛がっていました。朝ごはんも食べられなくて…」

    このように、子どもの代わりに親が答えてしまうと、子どもは「自分の言葉で伝える練習の機会」を失ってしまいます。

    もちろん、親が焦る理由もあります。

    ● 「診察をスムーズに終えたい」

    ● 「先生に正確に伝えなきゃ」

    ● 「周りの目が気になる」

    ● 「子どもがうまく説明できないかもしれない」

    でも、その”焦り”が、結果的に子どもの”主体性”を奪ってしまうのです。

    親の善意による先回りが、子どもの成長機会を減らしてしまう。これは、家庭教育においてよく見られる「過干渉」のひとつの形です。

    将来のための”練習の場”としての病院

    子どもたちは、いずれ一人で病院に行く日が来ます。中学生になり、高校生になり、大学生になり…。その時に必要なのは、

    ✅ 自分の症状を言葉で伝える力
    ✅ 質問を理解して答える力
    ✅ 不安を抱えながらも対応する力

    これらは一朝一夕で身につくものではありません。小さな診察の場こそが、その練習のスタートラインになります。今は嫌でも子どもが診察を受ける際、親が付き添わなければいけない病院も増えました。それを「練習できるいい機会」とプラスに捉え、子どもの練習の場とさせていけるといいと思います。

    親が少しだけ”任せてみる”勇気を持つことで、子どもは「自分で伝えられた」「聞かれたことに答えられた」という成功体験を積み重ねていきます。

    この体験の積み重ねが、非認知能力の中核である「自己効力感」を育てるのです。自己効力感とは、「自分はできる」という感覚。この感覚こそが、将来の困難に立ち向かう土台となります。

    家庭教育×非認知能力の視点で見た「病院での練習ステップ」

    では、具体的にどのように病院を”練習の場”として活かせばよいのでしょうか。3つのステップでご紹介します。

    ステップ1:子ども自身の”声”を聴く場をつくる

    病院に行く前に、こんな問いかけをしてみましょう。

    ● 「今日はどんな気持ち?」

    ● 「先生にどんなことを話したい?」

    ● 「どこが痛いか、自分の言葉で説明できるかな?」

    答えられなくても構いません。”考えようとする時間”そのものが、思考力と自己認識を育てます。

    効果的な事前準備:

    「今日は、先生の質問には〇〇ちゃん(くん)が答えてみようね。難しかったらママ(パパ)が助けるから」と、事前に”役割”を伝えておくことで、子どもは心の準備ができます。

    ステップ2:診察中は”親が見守る”を意識する

    診察室に入ったら、親は一歩引いて「見守る」姿勢を意識しましょう。

    医師が子どもに質問したとき:

    1. すぐに答えず、3秒待つ

    2. 子どもが答えようとする様子を見守る

    3. 本当に困っている場合だけ、「補足」として助ける

    沈黙に耐える3秒が、子どもの成長を後押しします。

    「代わりに答える」ではなく「補足する」例:

    ❌ 「昨日の夜から痛いんです。熱も37.5度ありました」(親が全部答える)

    ⭕ 子ども「お腹が痛い…」→ 親「そうだね。本人が言いたかったのは、昨日の夜からずっと痛いということです」(子どもの言葉を受けて補足)

    この違いが、「親の過干渉」と「適切なサポート」の分かれ道です。

    どうしても子どもが答えられないときは:

    「緊張してるね。ママ(パパ)が少し助けるね」と声をかけてから補足しましょう。これにより、子どもは「助けてもらった」という安心感と、「次は自分で言ってみよう」という意欲を持つことができます。

    ステップ3:振り返りの時間をもつ

    診察後には、必ず振り返りの時間を作りましょう。この振り返りが、経験を”学び”に変える重要なプロセスです。

    効果的な振り返りの声かけ:

    ● 「今日はどんなふうに話せた?」

    ● 「先生の質問、わかった?」

    ● 「緊張したけど、自分で答えられたね」

    ● 「難しかったところはどこ?」

    「できた・できなかった」よりも、「挑戦できた」「考えて答えようとした」ことを承認する声かけが、非認知能力の育成につながります。

    たとえうまく答えられなかったとしても、「次はこんなふうに言えるといいね」と前向きに次につなげることで、子どもは失敗を恐れずに挑戦する姿勢を身につけていきます。

    親が押さえておきたい3つのポイント

    病院を”練習の場”として活かすために、親として押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

    ①「病院=育ちの場」と捉える

    病院は治療を受ける場所であると同時に、子どもが社会と関わる練習をする場所でもあります。

    医師や看護師とのコミュニケーション、待ち時間のマナー、自分の状態を説明する経験…これらすべてが、将来の社会性を育てる土台になります。

    親が「ここは学びの機会だ」と捉えるだけで、関わりの姿勢が自然と変わります。「早く終わらせなきゃ」ではなく、「子どもが成長する時間」として、少し余裕を持って臨むことができるのです。

    ②「子どもの時間」を尊重する

    子どもは、大人とは違う時間軸で物事を処理します。質問を理解するのに時間がかかったり、言葉を選ぶのに時間がかかったりするのは、発達段階として自然なことです。

    ● 「早く答えなきゃ」というプレッシャーを感じる

    ● 自分で考える前に答えを与えられてしまう

    ● 「自分の言葉は待ってもらえない」と学習してしまう

    焦りや体裁ではなく、”子どものペース”を大事にすること。これが、信頼関係を育み、子どもの自主性を尊重する第一歩です。

    ③”任せる勇気”を持つ

    これが最も難しく、最も大切なポイントです。

    親として、子どもが困っている様子を見ると、すぐに助けたくなるものです。けれど、すぐに答えず、少しだけ待つ。その沈黙を、成長の時間に変える。

    「任せる」とは、「放置する」ことではありません。子どもを信じて見守り、必要なときには適切にサポートする。このバランスこそが、家庭教育における最も重要なスキルです。

    ● 自分で考える力

    ● 言葉で表現する力

    ● 失敗を恐れない挑戦心

    ● 「自分はできる」という自信

    小さな「できた」が積み重なることで、子どもは確実に成長していきます。特に我が子を見ていて自信がないなと感じる親御さんは“信じて任せる”というターンを意識して対応されると、少しずつ子ども側に自信がつくようになってくるでしょう。

    よくある質問とその答え(FAQ)

    A: 年齢や発達段階に応じて、無理のない範囲で始めましょう。

    3〜4歳なら「痛いところ、指差しできる?」という簡単な質問から。小学生なら「どんなふうに痛い?」と具体的に。

    完璧に説明できることが目的ではなく、「自分で伝えようとする経験」そのものが大切です。

    A: 無理強いはせず、一度親が答えてから「今度は一緒に言ってみようか」と次につなげましょう。

    緊張は自然な反応です。「緊張するよね。でも大丈夫だよ」と安心感を与えることが最優先。その上で、少しずつ挑戦の幅を広げていけば良いのです。

    A: 診察の最初に「子ども本人に答える練習をさせたいので、少しお時間いただけますか」と伝えるのも一つの方法です。

    多くの医療者は、子どもの成長を応援してくれます。理解を示してくれる医師も多いはずです。

    A: はい、むしろ日常でこそ活かすべきです。

    ● お店での注文を子どもにさせてみる

    ● 学校の先生との面談で、子ども自身に話させる

    ● 習い事の先生への質問を、子ども自身にさせる

    「自分で伝える力」は、あらゆる場面で必要とされる社会性の基本です。今回は病院をテーマにブログ記事を書きましたが、日常のあらゆる場面で子どもの成長を促せる場面はあります。「ここで任せてみるのはどうだろう?」という親御さん側のアンテナをしっかり張っておくと、チャレンジする機会も増えるでしょうね。

    A: まずは「3秒待つ」を意識してみてください。

    心の中で「1、2、3」と数える。この小さな習慣が、子どもに”考える時間”を与えることになります。完璧を目指さず、「今日は少し待てた」という小さな成功を積み重ねましょう。親も子も初めから完璧を求める必要はありません。できる所から始めていきましょう。

    まとめ

    病院通いは、ただの通過儀礼ではありません。そこには、子どもの「考える」「感じる」「伝える」力を育てるチャンスが詰まっています。

    親がその場を”練習の時間”として見守ることが、将来、子どもが一人で社会と関わるための大切なステップになるのです。

    そして、みちびきはその”両輪”を通して、親と子が一緒に自立へ向かうサポートを行っています。

    今日から始められる小さな一歩:

    次の通院では、診察室に入る前に「今日は自分で先生に話してみようか」と、ひと言声をかけてみてください。

    そして、診察中は少しだけ待ってみる。たった3秒の沈黙が、お子さんの大きな成長につながります。

    完璧を目指す必要はありません。小さな挑戦を、一緒に積み重ねていきましょう。

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    Profile

    佐藤 博

    佐藤 博家庭教育コーディネーター/
    代表カウンセラー(みちびき)

    15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

    鈴木 博美

    鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
    統括ディレクター(みちびき)

    家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。

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