家庭教育力が低下している原因とは?社会的背景から見る“家庭が変化した理由”
- 2025/12/26
- 2025/12/28

「昔と比べて、子どもとの関わり方が難しい」「家庭の教育力が落ちている」――そんな声をよく耳にします。
でも、それは決して親の努力不足ではありません。家庭教育力の低下は、社会全体の構造変化によって起きているものです。核家族化・共働きの増加・スマートフォンの普及など、家庭を取り巻く環境がここ数十年で大きく変わりました。
この記事では、家庭教育力が低下している主な背景と原因を、社会・家庭・親子関係の3つの視点から整理します。「なぜ今、子育てが難しいのか」を理解することで、自分の家庭を責めるのではなく、前向きな一歩を踏み出すヒントが見えてくるはずです。
社会的背景から見た家庭教育力低下の要因
家庭教育力の低下を理解するには、まず社会全体がどう変化してきたのかを知る必要があります。
① 核家族化・少子化による孤立化
戦後、日本の家族構成は大きく変化しました。三世代同居が当たり前だった時代から、核家族が主流となり、現在では単身世帯も増加しています。
家庭内での“教育文化の継承”が途絶えた
かつては祖父母が孫の世話をし、親が仕事をする間も子どもは家族に見守られていました。祖父母から親へ、親から子へと、子育てのコツや家庭のルール、地域の慣習などが自然に受け継がれていました。
しかし核家族化により、この継承のラインが断たれました。親は「子育てをどうしたらいいか」を身近な人から学ぶ機会を失い、手探りで育児をすることになりました。
祖父母や地域の支援が減り、親がすべてを担う構造に
昔なら祖父母が「ちょっと見ててあげるから休みなさい」と言ってくれた場面も、核家族ではすべて親が担わなければなりません。子どもが病気のとき、学校行事のとき、仕事の繁忙期――すべてを夫婦だけ、あるいは一人で乗り越えなければならない現実があります。
「頼れる人がいない」ことが、育児不安を増大させている
少子化も影響しています。きょうだいが少ない、あるいは一人っ子が増えたことで、「子どもと接した経験」がないまま親になる人が増えました。赤ちゃんを抱いたのが自分の子が初めて、という親も珍しくありません。
経験がない中で、頼れる人もいない。この孤立感が、育児不安を増大させています。
② 地域社会のつながりの希薄化
核家族化と並んで大きな変化が、地域のつながりの希薄化です。
かつて地域が担っていた“見守り・声かけ”の機能が低下
「近所の子どもは地域の子ども」という意識があった時代には、近所の大人が子どもたちに声をかけ、時には叱り、見守っていました。子どもたちは多様な大人と関わる中で、社会性や人との接し方を自然に学んでいました。
しかし今は、プライバシー意識の高まりや防犯意識の変化により、地域での関わりが減少しています。「知らない大人が子どもに声をかける=不審者」と捉えられることもあり、地域の見守り機能は大きく低下しました。
子どもが家庭と学校以外の人と関わる機会が減少
子どもたちも、家庭と学校以外で人と関わる機会が減っています。近所の公園で異年齢の子どもたちが一緒に遊ぶ光景も少なくなりました。
この結果、子どもは限られた人間関係の中で育つことになり、多様な価値観や生き方に触れる機会が失われています。
家庭が社会から孤立し、“閉じた教育”になりやすい
地域とのつながりが薄れると、家庭は社会から切り離された密室のような状態になります。外からの視線や支援がないため、親は孤独の中で育児をし、子どもは家庭内だけの価値観で育つことになります。
この「閉じた教育」は、親子双方にとって息苦しさを生み、問題が深刻化しても外部に相談しにくい状況を作り出しています。
③ 情報社会と教育不安の拡大
インターネットやSNSの普及は、育児情報へのアクセスを容易にした一方で、新たな問題も生み出しました。
SNSやメディアで“正解”が溢れ、親が情報に振り回される
検索すれば無数の育児情報が出てきます。しかしその中には、専門的なものから個人の経験談、科学的根拠のないものまで、玉石混交の情報が含まれています。
「どの情報が正しいのか」「自分のやり方は間違っているのではないか」と不安になり、情報を追い求めるほどに迷いが深まる――そんな悪循環に陥る親も少なくありません。
「他の家庭と比べる」傾向が強まり、自信を失いやすい
SNSでは、他の家庭の「良い部分」だけが切り取られて発信されます。楽しそうな家族写真、子どもの成長報告、素敵なイベント――それらを見るたびに、「うちは何もできていない」と自分の家庭と比較してしまいます。
比較は劣等感を生み、「自分は親として失格なのではないか」という自信喪失につながります。
情報過多が、親子の自然な関わりを阻害している
情報を追い求めるあまり、目の前の子どもを見る時間が減っていることもあります。「どう関わるべきか」ばかりを考えて、「今、この子は何を感じているか」を感じ取る余裕がなくなってしまうのです。
💡 引用できるフレーズ
「家庭教育力の低下は、“孤立”と“情報の氾濫”が生んだ現代的課題です。」
家庭環境の変化による影響
社会の変化は、家庭環境そのものにも大きな影響を与えています。
④ 共働き・長時間労働による家庭時間の減少
女性の社会進出が進み、共働き世帯が増加しました。経済的な理由から、両親が働かざるを得ない家庭も多くあります。
家族が一緒に過ごす時間が減少し、“会話の量”が減る
朝はバタバタと準備をして家を出て、夜は疲れて帰宅する。夕食は急いで済ませ、お風呂に入って寝る。そんな毎日の中で、家族がゆっくり会話をする時間は驚くほど少なくなっています。
会話が減ると、子どもの小さな変化や悩みに気づきにくくなります。親子の心の距離も、少しずつ広がっていきます。
「忙しさからの放任」「関わりすぎの過保護」の両極化が進む
忙しさは、親の関わり方を両極化させます。
時間がなくて子どもに関われず、結果的に放任になってしまうケース。あるいは逆に、限られた時間の中で「良い親」であろうとするあまり、過保護になってしまうケース。
どちらも、子どもの自立心や主体性の発達を妨げる要因になります。
⑤ メディア・スマホ依存による家庭内コミュニケーションの希薄化
スマートフォンやタブレット、ゲーム機の普及は、家庭内のコミュニケーションに大きな影響を与えています。
親も子もデジタル機器に向かう時間が増え、会話・共同行動が減少
食卓でそれぞれがスマホを見ている。リビングにいても、親はテレビ、子どもはゲーム機。物理的には同じ空間にいても、心理的にはバラバラ――そんな家庭が増えています。
デジタル機器は便利で魅力的ですが、それが家族の対話や共同体験を奪っているという現実があります。
子どもの生活リズム・集中力・感情表現力への影響
長時間のスマホやゲームは、子どもの生活リズムを乱します。夜遅くまで画面を見ることで睡眠不足になり、朝起きられない、学校で集中できないといった問題が生じます。
また、画面越しのコミュニケーションに慣れすぎると、対面での感情表現や共感力が育ちにくくなるという指摘もあります。相手の表情や声のトーンから気持ちを読み取る力は、実際の対話の中でしか育たないのです。
⑥ 経済的不安と精神的余裕の欠如
経済的な不安定さも、家庭教育に影響を与えています。
生活の不安が子どもの教育への焦りや過干渉を招く
「この子が将来困らないように」という思いから、親は教育に力を入れようとします。しかし経済的余裕がないと、「良い教育を受けさせられない」という焦りが生まれます。
あるいは逆に、「せめて教育だけは」と無理をして習い事や塾に通わせ、家計を圧迫してしまうこともあります。
「余裕がない家庭ほど、対話が減る」「笑顔が減る」
経済的な不安は、精神的な余裕を奪います。お金の心配で頭がいっぱいになると、子どもの話をゆっくり聞く余裕がなくなります。イライラしやすくなり、些細なことで怒ってしまうことも増えます。
子どもは敏感に親の状態を感じ取ります。親に余裕がないと、子どもも不安定になり、家庭全体の空気が重くなっていきます。
親の意識・関わり方の変化
社会や家庭環境の変化は、親の意識や関わり方にも影響を与えています。
⑦ 過保護・放任・無関心の増加
現代の親の関わり方は、過保護と放任の両極に分かれる傾向があります。
子どもの自立を待てず、先回りする関わり
「子どもに失敗させたくない」「傷つけたくない」という思いから、親は先回りしてしまいます。宿題の準備をしてあげる、友達関係に口を出す、本人が困る前に解決してしまう――こうした過保護な関わりは、子どもから「自分で考え、決断し、行動する」機会を奪います。
過保護に育てられた子どもは、自分で問題を解決する力が育たず、常に誰かに頼ることになります。
忙しさ・疲労・情報不信から、子どもへの関与を避ける傾向も
一方で、忙しさや疲労から、子どもへの関わりを最小限にする親もいます。「自分で考えなさい」と突き放すのではなく、単に関わる余裕がないという状態です。
また、「どう関わればいいかわからない」「何を言っても反抗される」という無力感から、関わることを諦めてしまうケースもあります。
結果として、子どもが「自分で考え、動く機会」が減少
過保護でも放任でも、結果は同じです。子どもが自分で考え、判断し、行動する機会が減り、主体性や自立心が育たなくなります。
⑧ 親自身が孤立している
子どもだけでなく、親自身も孤立しています。
SNSでは他者比較・完璧主義が強まり、親が自分を責めやすい
SNS上では、「良い親」「完璧な家庭」のイメージが溢れています。そうした投稿を見るたびに、「自分はできていない」と自分を責めてしまいます。
しかし実際には、どの家庭も悩みや苦労を抱えています。完璧な親など存在しません。それでも、他者と比較して自分を責め続けることで、親は精神的に追い詰められていきます。
“家庭教育を語り合う場”が少なく、自己流・孤育て化している
昔は地域や親族の中で、自然に子育ての悩みを共有し、アドバイスをもらう機会がありました。しかし今は、そうした場が少なくなっています。
ママ友はいても、本音で悩みを話せる関係は少ない。相談したくても、「こんなことで悩んでいるなんて恥ずかしい」と思って口に出せない。
こうして親は孤立し、自己流の「孤育て」を続けることになります。
まとめ|”家庭教育力の低下”は、社会全体の課題
家庭教育力の低下は、個人の問題ではありません。社会・家庭・親子関係の変化が複合的に重なって起きているのです。
家庭教育力低下の主な要因
● 社会的背景:核家族化、地域のつながりの希薄化、情報社会と教育不安
● 家庭環境の変化:共働き・長時間労働、メディア依存、経済的不安
● 親の意識の変化:過保護・放任・無関心の増加、親自身の孤立
だからこそ、必要なのは「親を責めること」ではなく、“家庭がもう一度育ち合える仕組み”を取り戻すことです。
親が孤立せず、適切な情報や支援にアクセスでき、子どもとゆっくり向き合える時間を持てる。そんな環境を、家庭の中から、そして社会全体で作っていく必要があります。
みちびきでは、家庭の中から「育てる力」を再構築するために、非認知能力と家庭教育の両輪からサポートしています。
「今の自分にできることは何か」を一緒に考え、小さな一歩から始めていきましょう。家庭教育力は、必ず取り戻すことができます。
プロフィール

佐藤 博家庭教育コーディネーター/
代表カウンセラー(みちびき)
15年間、不登校や母子登校のご家庭を訪問支援。子どもの「自分で社会とつながる力」を育む土台づくりに尽力。文科省協力者会議委員やいじめ対策委員も歴任。「傾聴で終わらせない、変化につながる関わり」が信念。お子さんへの直接支援に加え、ご家庭の課題を可視化し、親御さんと共に解決するスタイルが特長。家庭教育等の講演・研修も多数。「家庭からはじまる社会的自立支援」を推進します。

鈴木 博美家庭教育コーディネーター/
統括ディレクター(みちびき)
家庭教育アドバイザー・訪問カウンセラーとして9年間、不登校や親子関係に悩むご家庭を支援。2025年、支援10年目を迎えます。全国の家庭への直接支援を通し、親御さんとの対話で子どもの社会的自立をサポート。家庭内の会話や関わり方を可視化し、非認知能力を育む声かけや実践的なアドバイスで親子に伴走。保護者向けセミナーや講演も多数。「支援に迷う方こそ安心して相談できる存在」を目指し、家庭の再構築に丁寧に取り組みます。











